(CNN) 今年1月6日に発生した米連邦議会議事堂の襲撃事件を調査する下院特別委員会は27日、初の公聴会を開き、警護に当たった警官4人から当時の様子を聞いた。
同委員会は襲撃事件の全貌を調査し、トランプ前大統領が果たした役割も追及する予定。だが、初回の3時間に及ぶ公聴会ではまず、警官が直面したトランプ氏支持者らによる暴力に焦点が当てられた。
公聴会のポイントを5つにまとめた。
暴力を詳述する衝撃的な証言
証言はコロンビア特別区首都警察のダニエル・ホッジス氏、マイケル・ファノン氏、議事堂警察のハリ・ダン氏、アキリノ・ゴネル氏の4人が行った。攻撃を受け命の危険にさらされた状況を振り返り、一人ひとりが証言した。
委員会ではボディーカメラの映像が流され、証人や議員が感傷的になる場面もあった。
ホッジス氏は暴徒と金属製のドアフレームの間に挟まれ、苦しさのあまり叫んだと証言。ファノン氏は群衆の中に引きずり出されてたたかれ、自分が持っていたテーザー銃で電気ショックを繰り返し与えられたと述べた。
「私は自分の武器を奪われ、殺される危険にあった。『あいつの銃で殺せ』という声が聞こえた」「今でもそうした言葉が頭から離れない」(ファノン氏)
ダン氏はトランプ氏の支持者から人種差別的な言葉を投げかけられた様子を話した。警官の服装でそうした言葉を浴びた経験はなかったという。
イラクでの従軍経験を持つゴネル氏は、戦闘地域にいたどの時点よりも議事堂での対応の方が懸念が大きかったと発言。「この入り口を守りながら、こうやって自分は死ぬんだと思ったことを覚えている」と語った。
「観光客の訪問」とは全く違う
トランプ氏やその側近は、議事堂襲撃で起きた暴力が大きく扱われないようにしようと積極的に動いてきた。一部の議員は、反乱は存在せず、暴徒は暴力的でなく武装もしていなかったと示唆。ジョージア州のアンドルー・クライド議員は襲撃を「通常の観光客の訪問」になぞらえたりもした。
トランプ氏は米紙ワシントン・ポストの記者によるインタビューで、「愛情のある群衆」だったとも発言している。
だが、公聴会での証言は、襲撃をごまかそうとするこうした試みに切り込むものとなった。ボディーカメラの映像が見せた状況は暴力であり、見るに堪えなかった。
警官らは、トランプ氏支持者による暴力が、彼らが守ろうとした議員によって無視されようとしてきたことに怒りを示した。
ファノン氏は「この部屋にいる人々を守るために地獄に行ったような気分だった。だが、あまりに多くの議員が今、地獄は存在しなかった、または実際そんなにひどくはなかったと私に言っている」と発言。机を強くたたいて、「私の同僚に示された無関心は恥ずべきものだ」と声を張り上げた。
委員に選ばれた共和党議員2人のうちの一人、リズ・チェイニー氏は、ゴネル氏にトランプ氏の「愛情のある群衆」という発言についてどう感じるかを質問。ゴネル氏は「気分を害する。自分の行動に対する哀れな言い訳だ」と答えた。
特別委員会はトランプ氏を追及へ
チェイニー氏の質問を除いては、公聴会がトランプ氏の役割に触れることはほとんどなかった。
だが、その方向性は明確だ。
ベニー・トンプソン委員長は公聴会の冒頭、「我々から民主主義を奪い取ろうとした暴徒はうそによって駆り立てられていた」「そうしたうそに格好の場所は与えない。こうした大きなうそがまかり通った方法と原因を理解する必要がある」と述べた。
トランプ氏や共和党の同僚議員から懲罰が求められているチェイニー議員は、国民が「1月6日の計画と準備について知るすべての人物」からの証言を聞く権利があると主張した。
情報筋によると、司法省は元当局者が証言をしやすくするために、襲撃事件に関連した少なくとも一定の証人の証言には秘匿が求められる大統領特権を適用しないとしている。
トランプ氏やその側近、議会内の支持者が証言台に立つかは不明だが、委員会としてはそれも求めていく姿勢を示している。
外野から見守るトランプ氏の仲間
下院民主党はこれまで、マラー特別検察官の証言からウクライナ疑惑での弾劾(だんがい)手続きまで、数多くの高位の人物の公聴会を開いてきた。
だが、今回は初めて、トランプ氏を守る同氏の仲間がいない状況での調査となる。
9人の委員は民主党から7人、共和党から2人。全員が襲撃事件の真相を探る重要性について認識を共有している。
下院共和党のマッカーシー院内総務は5人の共和党の委員を指名したが、そのうち2人をペロシ下院議長が拒否したことを受けて、指名案を撤回した。マッカーシー氏は、ペロシ氏の特別委員会は政治的動機に基づくものだと批判。同僚議員らとともに公聴会前に記者会見を開き、ペロシ氏を攻撃した。
だが、ペロシ氏が指名した共和党の委員2人はマッカーシー氏の主張に反論する姿勢を見せている。
共和党のアダム・キンジンガー委員(イリノイ州選出)は、「共和党の多くの議員が襲撃事件をただの党派間の争いだと見ているから、何が起きたのかをいまだ正確につかめていない」「それは有害で、警官やその家族、議会スタッフ、米国民への仕打ちとなる」と発言した。
襲撃事件の影響は政治の外に及んでいる
27日の証言では、襲撃事件を間近に経験した人々にとって、その影響が長く続いていることが示された。特に議事堂警察は警官の士気低下や相次ぐ退職の問題に直面している。
証言に立った警官からは、議事堂で守ろうとした議員が事件を無視したり、大きく取り扱わないようにしている姿勢に率直な不満が表明された。
ゴネル氏は「あなたがたは擁護しようのないものを擁護しようとしている」と批判。「それは一般の警官の士気をそぐだけでなく、将来の警官候補の士気もそぐ」「議員らが気にもしないときに、どうして彼らのために命を賭けようと思うのか」と語った。
ダン氏は事件の精神的影響が多くの警官に残っていると説明。自身はカウンセリングを求めており、同僚にもカウンセリングを受けることをためらわないでほしいと語った。
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