富裕層でなくても宇宙競争でもうける、「宇宙ETF」とは?

宇宙ETFにはヴァージン・ギャラクティック株などが含まれている/Virgin Galactic

2021.07.22 Thu posted at 18:00 JST

ニューヨーク(CNN Business) 一般の人が米アマゾンのジェフ・ベゾス前最高経営責任者(CEO)のように宇宙に飛び立つのはまだ不可能かもしれない。だが、宇宙探査をめぐる熱狂は、地球に縛り付けられた普通の投資家にとっても無縁ではない。

宇宙への関心の高まりを背景に、複数の公開企業や上場投資信託(ETF)が値上がりしているのだ。

ベゾス氏は20日、自身の手掛けるブルーオリジン社の宇宙船で飛び立った後、着陸に成功。その9日前には、同じく富豪実業家のリチャード・ブランソン氏も大きな注目を集めた宇宙飛行を行った。

2019年に登場し、「UFO」のティッカーシンボルで取引される「プロキュア・スペースETF」は、ブランソン氏の宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックを最大の投資先としている。このETFは年初来で14%、過去12カ月では40%以上の上昇を見せた。

「このファンドへの関心が今年高まっているのは確実だ。ヴァージン社による先週の打ち上げを前に、多くの人から投資があった」。UFOファンドのマネジャーで、プロキュア社の最高経営責任者(CEO)を務めるアンドリュー・チャニン氏はこう語る。

もちろん、ブルーオリジンやスペースXは非公開会社なので、UFO ETFは両社の株は保有していない。

チャニン氏はCNN Businessに対し、UFOはパッシブ運用、つまり指数に基づく運用を行っていると説明する。この場合、連動対象となる指数は、宇宙投資サービスという会社のつくった「Sネットワーク宇宙インデックス」になる。

宇宙経済

チャニン氏によると、インデックスマネジャーが着目するのは、裕福な旅行者を宇宙に送り込むことを目指す企業だけではない。宇宙への打ち上げによる実際の売り上げは、通信衛星やインターネットサービス衛星の利用増加から生まれる可能性が高い。

このため、UFOはヴァージン・ギャラクティックを主要な組み入れ銘柄としているものの、他の上位銘柄は宇宙旅行とは関係がない。

UFO ETFはヴァージン・ギャラクティックを含め、宇宙ビジネスとつながりがある企業に投資している

UFOの主要保有銘柄としては、ナビゲーションや全地球測位システム(GPS)の分野をリードするガーミン、モバイルマッピング(移動体計測)を手掛けるトリンブル、通信企業のイリジウム、衛星メーカーのマクサー、衛星メディアのDISHやシリウスXMなどが挙げられる。

チャニン氏は、宇宙ビジネスの収入機会は45年までに2兆7000億ドル規模に達する可能性があるとした米金融大手バンク・オブ・アメリカの試算に言及。こうした売り上げの半分はブロードバンド通信から発生する可能性があると指摘した。

宇宙株ファンドはUFO ETFのみにあらず

「衛星産業は宇宙経済の中で最も誤解を受けている分野のひとつだ」と、チャニン氏は指摘する。衛星通信は現在、宇宙産業の世界売上高4250億ドル近くの約3分の1を占めているという。

「宇宙に目を向けながら通信を除外するのでは、本当の意味で宇宙経済を表しているとは言えない」(チャニン氏)

プロキュアの宇宙ETFには幾つかの競合相手が存在する。「SPDR S&P ケンショー・ファイナル・フロンティアズETF」は年初来や過去1年のパフォーマンスはUFOに劣るものの、やはりヴァージン・ギャラクティック株を保有している。

ただ、ファイナル・フロンティアズETFの投資先は航空宇宙や防衛企業への偏りが大きい。組み入れ上位銘柄にはL3ハリス・テクノロジーズやハニーウェル、ロッキード・マーチン、ノースロップ・グラマンなど、売り上げの大部分を国防総省から得る企業が複数含まれている。

キャシー・ウッド氏率いる資産運用会社アーク・インベストメントも今年、「アーク・スペース・エクスプロレーション&イノベーションETF」を立ち上げた。ただ、このファンドはヴァージン・ギャラクティック株は保有していない。

組み入れ上位銘柄はトリンブルやイリジウムやL3ハリスやロッキードなどで、UFOとファイナル・フロンティアズを混ぜたような形となっている。

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