脳インプラント装着の男性、コンピューター通じ「話せる」ように 米研究

発話能力を失った男性が脳に埋め込んだ装置を通じ、画面表示による「会話」を行った/Courtesy Barbara Ries/UCSF

2021.07.15 Thu posted at 20:45 JST

(CNN) 15年以上前に脳卒中で発話能力を失った男性の脳にインプラントを埋め込んだところ、脳の電気活動を翻訳した言葉がスクリーンに表示され、「話せる」ようになった――。そんな研究結果が14日、米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された。

この技術は「神経義肢」と呼ばれる。今のところ1人の患者にしか使われていないが、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究チームは、他のまひ患者の意思疎通の助けになる可能性もあると期待を寄せている。

研究チームを率いたUCSFの神経外科医、エドワード・チャン氏は声明で「われわれの知る限り、まひで話せなくなった人の脳活動から完全な単語を直接解読することに成功したのは、これが初となる」と指摘。「脳の自然な発話機構を利用することでコミュニケーションを回復できる非常に有望な可能性を示すものだ」と述べた。

研究チームは今回、男性患者の脳の発話をつかさどる領域に電極アレイを埋め込んだ。この男性は脳卒中によるまひで20歳の時に発話能力を失っていた。

UCSFによると、これ以来、男性の頭や首、手足の動きは極めて限定され、現在は野球帽に取り付けたポインターで画面上の文字を押すことで意思疎通している状態だという。男性の認知機能は損なわれていない。

「神経義肢」と呼ばれる技術で脳活動から単語を解読する様子を描いたイラスト

現在30代後半の男性は実験で、脳の電気活動を翻訳するアルゴリズムを用いて装置を調整する間、限られた語彙(ごい)を使うよう指示を受けた。すると、これらの単語がコンピュータースクリーンに投影された。

UCSFの動画には、男性がコンピュータースクリーンを通じて「おはよう」と話しかけられる様子が映っている。その数秒後、「ハロー」という答えが文字としてスクリーンに打ち込まれた。「きょうの調子はどう」という質問に対し、ぎこちないながら「すごく好調です」と答える様子も確認できる。

研究チームによると、解読スピードは中央値で1分間につき15.2語。単語のミスの割合は中央値で25.6%だという。

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