環境にやさしく費用も安い、樹木葬への関心高まる 英国

環境を損なわず可能な限り自然な方法で遺体を埋葬する「自然葬」に関心が集まっている/CNN

2021.08.14 Sat posted at 18:15 JST

(CNN) 墓地の若いトネリコの木々の下には掘ったばかりの穴があり、そこに埋葬される棺(ひつぎ)を待っている。その横には全てわらで束ねた花束が置いてある。

葬儀の参列者らが抱えている棺は、その土地に生えている柳の木で作られている。この場所に埋葬する物は全て天然素材で作られ、有機分解が可能でなければならないという要件を満たしている。

「地球に害を与えるのではなく、地球のためになる方法で埋葬される機会を人々に提供したかった」と語るのは、チャールズ・ロイデン牧師だ。

ロイデン牧師は、ロンドンの北約100キロに位置するベッドフォードシャーにあるこの墓地を設立したセントオールバンズ・ウッドランド・ベリアル・トラストの創設者の1人だ。

樹木葬は、環境を損なうことなく、可能な限り自然な方法で遺体を埋葬する「自然葬」や「緑の埋葬」の一種で、棺や故人の衣服は天然素材で作られていなければならず、遺体の防腐処理もしてはならない。遺灰を埋葬する場合も、生物分解性の骨つぼに入れる必要がある。

樹木葬は今、英国中で爆発的人気を得ている。

「英国は、自然葬を目指す世界的な動きをリードしており、今や自然葬はかなり一般化している」と語るのは、死や死別に関する助言を行っている慈善団体、ナチュラル・デス・センターのマネジャーを務めるロージー・インマン・クック氏だ。

インマン・クック氏によると、現在、英国には300カ所以上の自然埋葬地があるが、これまで自然葬を選択した人数に関する統計は取られていないという。

地元イングランドで育つ柳を編んで作った棺

死のコスト

今、遺体の埋葬にかかる環境コストに対する関心が高まっている。

米非営利組織、緑の埋葬評議会によると、米国だけで毎年430万ガロン(約1630万リットル)の遺体防腐処理用薬液(ホルムアルデヒドなどの有毒成分を含み、それらの成分が土壌に染み込む恐れがある)、160万トンのコンクリート、6万4500トンのスチールが埋葬に使われているという。また火葬による二酸化炭素(CO2)排出量は17億4000万ポンド(約79万トン)で、これは乗用車17万台の1年間の総排出量に相当する。

無論、一部の宗教の信者は、遺体を地球に無害な方法で埋葬している。例えば、ユダヤ教は伝統的に松などの天然木で作られた棺を使用し、遺体防腐処理も認められていない。またイスラム教でも遺体の防腐処理は行わず、リンネル(亜麻布)や綿布に包んで埋葬する。

しかし英国では、遺体をあえて地球にプラスになる方法で埋葬するというのは、かなり新しい概念だ。ロイデン氏が2006年にウッドランド・ベリアル・トラストを設立した時、世間から「非常に変わった組織」と見られたという。設立当時、同組織が行った埋葬の回数は、ロイデン氏の推定で月に1回だったが、現在は週に数回行っており、その数は昨年、3割近く増加したという。

また自然葬は、従来の埋葬に比べ費用を大幅に抑えられる。遺体の防腐処理の費用を省けるだけでなく、標準的な棺が数千ドル(数十万円)もするのに対し、柳製の棺は700ドル(約7万7000円)ほどしかかからない。また英国の墓地の区画は、場所によって価格が大きく異なるが、ウッドランド・ベリアル・トラストの墓地の区画は一律850ポンド(約13万円)だ。

自然葬の人気は英国以外でも高まっている。19年に米国で行われた調査では、回答者の半数以上が緑の埋葬の選択肢の検討に興味を示した。また、緑の埋葬評議会によると、現在、米国とカナダには合わせて300カ所以上の緑の埋葬墓地があるという。

環境を損なわず遺体を埋葬、英国にみる「自然葬」の取り組み

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。