北半球の各地で異常な熱波 死者相次ぎ山火事頻発、北極圏も猛暑

カナダ・ブリティッシュコロンビア州で発生した山火事。北半球の各地が異常な熱波に見舞われている/BC Wildfire Service/Reuters

2021.07.05 Mon posted at 14:55 JST

(CNN) カナダ西部ブリティッシュコロンビア州にある山間部の町リトン(人口250人)は6月29日にカナダ史上最高の猛暑を観測し、同州では週末にかけて数百人が死亡した。州内の240カ所あまりで発生した山火事のほとんどは、今も燃え続けている。

リトンの6月の最高気温は平年であれば25度前後だが、29日は49.6度に達した。ほとんどの家にエアコンはなく、住宅は熱がこもる設計になっていて、この1週間は日中よりも夜間の方が暑い日が続いた。

続く火災でリトンは大部分が焼失して住民は避難を強いられ、周辺地域でも数百人が避難した。

研究者は以前から、気候変動の影響で熱波の頻度が増し、一層強烈になると予想していた。それが現実と化しているのはカナダだけではなく、北半球の多くの地域がますます居住不可能な状態になりつつある。

米北西部では異常な猛暑で道路が溶け、北東部のニューヨーク市では、節電のために洗濯機や乾燥機、さらにはエアコンなど電力消費の多い家電は使わないよう住民に呼びかけが行われた。

ロシアは首都モスクワで6月23日、同月の気温としては観測史上最高の34.8度を記録。シベリアの農家は熱波から作物を守るための対策に追われた。北極圏でさえも気温が30度台に突入している。シベリアのベルホヤンスクにある気象観測所は6月20日に38度を記録し、北極圏北部の観測史上最高に達したことを世界気象機関(WMO)が確認する見通し。

インド北西部では数千万人が熱波の影響を受けている。インド気象局によると、首都ニューデリーと周辺都市は6月30日に「極端な猛暑」を観測し、平年より7度以上高い40度台の気温が続いた。熱波にモンスーンが重なって、ラジャスタンなどの州では農家が打撃を受けている。

ファンから出る霧で涼をとる男性=6月30日、イラク首都バグダッド

イラク当局は首都バグダッドを含む複数の州で7月1日を休日にすると発表した。気温が50度を突破して電力網が破たんし、暑すぎて仕事も勉強もできないという理由だった。

CNNの取材に応じた専門家は、こうした各地の異常気象がどう関係しているのかを正確に突き止めるのは難しいとしながらも、北半球の複数の地域が同時に熱波に見舞われているのは偶然ではなさそうだと指摘する。

政治家の間でも、気候変動が熱波や暴風雨などの異常気象を加速させているとの見方は強まっている。

米国のバイデン大統領は6月30日、「気候変動が猛暑と長引く干ばつの重なる危険な現象を加速させている」「勢力の強まった山火事は動きが早くなり、これまで山火事が発生していた月を越えて続くようになっている」と指摘した。

どの程度の気候変動が異常気象を引き起こすかを研究している英気象庁のニコス・クリスティディス氏は、カナダや米国の猛暑について「人間の影響がなければ、この地域で6月にこれほどの記録的な猛暑になるのはほぼ不可能だと思われることが分かった」と解説する。

クリスティディス氏によると、人間が発生させる気候変動がなかった時代は、米北西部やカナダ南西部が極端な熱波に見舞われるのは「数万年に1度」の現象だった。ところが今では約15年ごとに起こり得ると同氏は指摘、地球温暖化ガスの排出がこのまま続いた場合、2100年ごろまでには1~2年ごとの頻度になると予想している。

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