ブルー・オリジン宇宙船、82歳女性が搭乗 60年前に宇宙飛行士の訓練

ジェフ・ベゾス氏(写真左)と「ニューシェパード」に搭乗予定のウォリー・ファンクさん(写真右)/Kena Betancur/Mark Ralston/AFP/Getty Images

2021.07.02 Fri posted at 12:36 JST

ニューヨーク(CNN Business) 半世紀以上前に米航空宇宙局(NASA)の有人宇宙飛行計画に参加するための訓練を受けながら、宇宙へ行く機会を与えられなかった82歳の女性が、20日に初飛行を予定している有人宇宙船「ニューシェパード」に搭乗する。同船を運航するブルー・オリジンが1日に発表した。

同船の4人目の搭乗者に選ばれたのはウォリー・ファンクさん(82)。米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)と弟のマーク・ベゾスさん、およびオークションで2800万ドル(約31億円)あまりを支払った人物(氏名は未発表)とともに、ニューシェパードに搭乗して宇宙へ出発する。

ベゾスCEOはインスタグラムへの投稿で、「名誉ゲスト」としてファンクさんの搭乗を発表。ファンクさんは興奮した様子で喜びの声を上げていた。

ファンクさんは1961年、女性宇宙飛行士の訓練を行う民間のプロフラム「マーキュリー13」の一員に志願した。同プログラムはNASAの有人宇宙飛行計画「マーキュリー計画」への参加を目的としており、参加した13人の女性は、NASAが同計画のために選んだ男性7人と同じ訓練やテストを受けた。

本人によると、ファンクさんは最年少で同プログラムを卒業し、「どの男性よりもうまく、早く完了した」と告げられたという。

マーキュリー13のテストとして感覚遮断タンクの中で過ごした時間は10時間35分に上り、有名宇宙飛行士だったジョン・グレンさんの記録を上回った。

ニューシェパードは着陸前にパラシュートを使って減速する見込み

「私はNASAに4回連絡して、『宇宙飛行士になりたい』と言ったけれど、誰も相手にしてくれなかった」とファンクさんは振り返る。「『ウォリー、君は女の子だからできないよ』と言われた私は、『自分が何だろうと、やりたいと思えばできる』と言い返した。私は誰もやったことがないことをやるのが好き」

ファンクさんはパイロットとして豊富な操縦経験をもち、飛行時間は1万9600時間超、3000人以上に自家用機や民間航空機機の操縦方法を教えてきた。「FAA(米連邦航空局)の免許は全部持っている。あなたを追い越すことだってできる」と冗談を口にしている。

ただ、ニューシェパード搭乗にそれほどの経験は求められない。完全自律式宇宙船の同船では、テキサス州にあるブルー・オリジンの施設でわずか数時間の安全講習と訓練を受けるだけで、実質的に誰でも宇宙飛行士になれる。

ニューシェパードの準軌道飛行では、音速の約3倍の速度(時速約3700キロ)で、ロケットがほとんど燃料を使い切るまで上空へ向けて飛行。宇宙船はロケットを離脱してホバリング状態となり、乗客は数分間、無重力を体験できる。これは、ジェットコースターが最高地点に達した瞬間に感じる無重力感が持続するような状態で、その後重力に引き戻され、地上に向けて降下する。

ニューシェパードは巨大なパラシュートを展開して時速約32キロにまで減速し、着陸する。乗客が感じる衝撃は座席のクッションが吸収する。

ガーディアン紙が2019年に紹介した経歴によれば、ファンクさんは過去に、ブルー・オリジンと競合する米宇宙旅行会社ヴァージン・ギャラクティックが建造する宇宙船の搭乗券も購入していた。ファンクさんがこちらにも予定通り搭乗する計画なのかどうかは分かっていない。

82歳女性、ブルー・オリジンで宇宙へ

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。