トランプ氏一族企業とCFO、15年に及ぶ脱税などで起訴

マンハッタン地区検察に出頭するトランプ・オーガニゼーションのアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者=1日/Jefferson Siegel/The New York Times/Redux

2021.07.02 Fri posted at 08:52 JST

ニューヨーク(CNN) 米ニューヨーク州のマンハッタン地区検察は1日、トランプ前米大統領一族の中核企業「トランプ・オーガニゼーション」とアレン・ワイセルバーグ最高財務責任者(CFO)を脱税などで起訴したと明らかにした。トランプ氏の名を冠する同社が刑事訴追されるのは初めて。

起訴状によると、罪状は2005年にさかのぼる税務スキームに関連するもの。ワイセルバーグ被告やトランプ・オーガニゼーションの他の幹部に簿外で報酬が支払われるスキームがあったという。

トランプ・オーガニゼーションと関連会社のトランプ・ペイロール・コーポレーションが10件、ワイセルバーグ被告が15件の罪状で起訴された。罪状には詐欺行為の計画、共謀、刑事責任を問われる脱税、虚偽文書の提出、事業記録の偽造が含まれる。

起訴状は、ワイセルバーグ被告が05年以降に所得176万ドル(現在の為替レートで約1億9600万円)にかかる税金を逃れたと言及。被告がニューヨーク市民であることを長年隠し、市の所得税の支払いを免れていた点も指摘した。

その結果、ワイセルバーグ被告は連邦、州、市の所得税合計90万ドル以上の課税を回避し、受け取る資格のない13万3124ドルの州税還付を受けたとしている。会社も給与税の支払いを免れたと指摘した。

会社はワイセルバーグ被告が住むマンハッタン区アッパーウェストサイドにあるマンションの賃料や電気などの料金、駐車場代、夫妻のための2台のメルセデス・ベンツ、孫の教育費などを負担していたという。会社には賃料などを記録した内部帳簿があったとしている。

トランプ前大統領。「政治的な魔女狩りだ」と批判する声明を出した

ワイセルバーグ被告は1日午後、無罪を主張した。裁判所は被告にパスポートの提出を命じ、誓約書への署名で釈放を認めた。

検察は、デジタル記憶媒体、大陪審証言、帳簿、納税記録、証人となる可能性のある人の証言を入手済みだとしている。

検察によると、ワイセルバーグ被告は会社も認識の上で、税務スキームへの関与を隠そうとしていたとされる。

トランプ氏本人は訴追されていない。

トランプ・オーガニゼーションの起訴は、ニューヨーク州マンハッタン地区検察のサイラス・バンス検事による2年以上の捜査の結果となる。捜査の端緒となったのは、トランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン被告が支払った口封じ金に絡む会計処理の問題で、最終的には、トランプ氏の納税記録提出を求める召喚状について最高裁で争われる事態となった。

トランプ氏は1日、起訴状の公開を受けて、2人の民主党員の検事が主導した捜査だと起訴を批判する声明を発表。「急進的な左派民主党員による政治的な魔女狩りだ」と語気を強めた。

トランプ・オーガニゼーションも同日声明を発表し、ワイセルバーグ被告はマンハッタン地区検察によって「前大統領に攻撃しようとする焦土作戦の駒」として利用されていると述べた。

起訴はワイセルバーグ被告に捜査協力への圧力を掛けるのが目的か

捜査は同社が保険会社や資金の貸し手を欺いたかどうかなど広範な範囲に及んでいたが、この数カ月は報酬以外の便益の提供に範囲を絞った。特にワイセルバーグ被告が焦点となった。

脱税事件に詳しい弁護士は、こうした便益関連だけで検察が起訴に踏み切るのは珍しいと言及する。検察は裁判所に対し、召喚状に従わないなど捜査中の同社の対応を批判し「責任を問われるべき会社としてこれ以上にない明確な例だ」と説明した。

今回の起訴で、ワイセルバーグ被告に対しトランプ氏やその会社に対する広範な捜査で協力するよう求める圧力が高まる可能性がある。この数カ月間、検察は被告に協力を求めていたが拒否されていた。

ニューヨーク州の元連邦検事、レベッカ・リシグリアーノ氏は、起訴状にあるのは昔からある詐欺だと指摘。ワイセルバーグ被告に対し、長年仕えた上司に歯向かうよう強力な圧力を掛けるのが目的だろうと述べた。

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