ミステリーボックス産業の闇、輸送中に死んだ犬や猫 中国

犬や猫などの動物が配達されるなかで、一部が死ぬなどの犠牲となっている/CCTV

2021.07.04 Sun posted at 18:30 JST

(CNN) そのビデオ映像からは、おびえきった動物たちの鳴き声がはっきり聞こえる。

配送トラックの荷台に高く積み上げられた箱が懐中電灯の光に照らされると、空気を通すための小さな穴から動物の毛皮が垣間見える。その箱の中の動物たちはまだましな方だ。他の箱はテープで完全に密閉されているように見える。

動物保護団体ラブホームは5月、中国の成都で行われたこの抜き打ち調査の様子を撮影した。この調査で、生後数カ月の子犬と子猫が入った156個の箱が発見され、一部の子犬と子猫はすでに死亡していた。中国のソーシャルメディアユーザーたちは、これらの画像に衝撃を受けると同時に、動物たちが中国で大流行している人気商品「ミステリーボックス」の犠牲になっていると知り、恐怖を感じた。

ミステリーボックスとは、中に秘密の贈り物が入っている小さな箱で、通常はコレクション用のフィギュアが入っている。中国人民大学でマーケティングを教えるディン・イン准教授によると、このミステリーボックスは「中毒性」があり、特に1シリーズの中に入手が困難なレアアイテムが含まれていると中毒性はさらに高まるという。この中毒性のおかげで、ミステリーボックスは一大産業となった。

しかし、この流行には負の側面がある。

中国では生きた動物の配送は違法だが、中国国営メディアによると、監視は十分に行われていないという。一部の業者はこの盲点をついて、ペットの配送を行っているが、中には途中で命を落とす動物もおり、動物保護団体は、動物への虐待だと非難している。

「ミステリーボックスには何でも入れられる」

中国では近年、このミステリーボックスが大流行し、最近はスマートフォンや腕時計、サングラスなどの高級品の入ったミステリーボックスもある。中国のソーシャルメディアでは、「ミステリーボックスには何でも入れられる」というのが新しいキャッチフレーズになっている。

しかし、一部のサイトでは、このキャッチフレーズの「暴走」が見られる。例えば、中国電子商取引大手のピンドウドウでは、ランダムに選んだ犬が入ったミステリーボックスが599元(約1万円)で販売されていた。この商品の広告には、健康で幸せそうなロングヘアーのチワワの写真が付されていた。

広告では「病気の犬はない」などとうたっている

大半のミステリーボックスの広告は、中に入っている動物の種類が明記され、高品質のペットであることを保証している。

しかし、ラブホームの動物救助センターが成都で行った、中国の配送業者ZTOエクスプレスの配送トラックに対する抜き打ち調査で明らかになった現実は、それらの広告の内容とは異なっていた。調査員らが発見したのは、テープで密封された小さなプラスチック製の箱に詰め込まれた、純血種ならぬ雑種の子犬や子猫たちだった。

抜き打ち調査を行ったラブホームによると、発見された子犬・子猫の多くは窒息や飢餓ですでに死んでいるか、瀕死の状態だったという。この子犬・子猫たちがどのプラットフォーム上で売られていたかは定かではないが、ラブホームによると、箱に貼られたラベルから、この子犬・子猫たちがミステリーボックス市場向けであったのは間違いないという。

「(ミステリーボックスの)販売会社は、通常、配送中に動物たちが排泄(はいせつ)しないよう、出発の前日に餌や水を与えるのをやめる」とラブホームの創設者チェン・ユンリアン氏は言う。幅がぎりぎり30センチの小さな箱の中に、3匹の子犬が身動きが取れない状態で押し込まれていた。

反発の声広がる

ラブホームがペット入りミステリーボックスをめぐるスキャンダルを暴いて以来、通販サイトで販売されていた多くのペット入りミステリーボックスが取り下げられた。しかし、中には、広告から「ミステリーボックス」という言葉を削除したり、里親探しや動物救助を装ったりするなどして、商品を偽装しようとする業者もいる。

ラブホームによる抜き打ち調査の後、ZTOは同社の「不正行為」について謝罪した。また、動物が入った箱が発見された成都の配送施設を閉鎖する意向を示し、警察の捜査にも協力すると述べた。

しかし、中国国営紙の環球時報によると、成都での抜き打ち調査からわずか1週間後に、江蘇省でミステリーボックス用のペットが入った箱が新たに発見されたという。捜査当局者らは、江蘇省にあるZTOエクスプレスの配送センターで動物が入った13個の箱を発見したが、中の動物の多くはすでに死んでいた。

この件についてZTOは、(抜き打ち調査が行われた)5月5日以降、同社は生きた動物を配送する慣行の是正に着手し、(出荷した)動物たちが返送されてきていたが、江蘇省で発見された動物たちは、同省の配送センター内に放置されていたと釈明した。

四川省で救出された動物の一部

国際的な動物保護活動を行う非政府組織(NGO)、世界動物保護協会(WAP)の中国支部に所属する科学者エバン・サン氏は、最初の抜き打ち調査の後すぐに、ペットが入った大量の箱が再び発見されたということは、ZTOエクスプレスが問題を是正するための十分な措置を講じなかった証拠だと指摘した。

「ペットが欲しい人は、そのような残酷な方法で動物を輸送することは許されないということを認識すべきだ」(サン氏)

病気の脅威

現在、中国には動物を虐待から守るための広範かつ全国的な法律は存在しない。しかし、ペット入りミステリーボックスをめぐるスキャンダルが発覚したのをきっかけに、専門家たちからそのような法案の提出を求める声が上がっている。

しかし、動物保護団体や国営メディアによると、野放し状態のペット入りミステリーボックス産業にはもうひとつ別の危険があるという。それは、病気が急速に広がる可能性だ。

ラブホームで活動するあるボランティアによると、成都での抜き打ち調査で発見された犬猫のうち十数匹が「ジステンパーや猫汎白血球減少症」などの病気と診断されたという。

世界保健機関(WHO)は、新型コロナウイルスの起源に関する報告書の草案の中で、動物がパンデミック(世界的大流行)の原因である可能性が最も高いと結論付けた。

中国は、新型コロナウイルスの大流行をきっかけに、野生動物を食べることを禁止するなど、動物由来感染症の大発生を防ぐための厳格な新しい法律を導入した。しかし、中国国営英字紙チャイナ・デイリーによると、電子商取引プラットフォーム上の多くのペット業者は、中国政府が提示した検査や検疫の要件を「ひたすら無視」しているという。

チャイナ・デイリーは、野放し状態の動物の売買の防止にもう少し注意を向けないと、いずれ「売買される動物たちが苦しむだけでは済まなくなるかもしれない」と警告した。

ミステリーボックス産業の闇 中国

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