中国、過去10年で最悪の電力危機に直面 酷暑の中各地で供給制限実施

中国が2011年以来となる深刻な電力不足に見舞われている/Sipa Asia/Shutterstock

2021.07.01 Thu posted at 15:10 JST

香港(CNN Business) 中国が大規模な電力危機の渦中にある。常軌を逸した気象、エネルギー需要の急増、厳格な石炭の使用制限が三重苦となり、国内の電力供給網を圧迫しているためだ。状況は数カ月にわたって改善しない恐れがあり、国内景気の回復や世界貿易にも悪影響を及ぼしている。

これまでの数週間で、国内の複数の省や自治区が電力危機に言及した。そこには中国の経済成長を牽引(けんいん)する最も重要な地域も含まれる。

広東省では1カ月にわたり電力の供給制限を実施。省内の企業が週に数日、操業を停止せざるを得ない事態になっている。中国の製造業の中心を担う同省の経済は、国内総生産(GDP)の1割超に相当する1兆7000億ドル(約188兆円)を生み出すとされる。地元当局者からは、電力の供給制限が年末まで続くと警鐘を鳴らす声も上がる。

広東省だけではない。雲南省、広西チワン族自治区、浙江省など少なくとも9つの省、自治区が同様の問題を抱えていることを明らかにしている。地元の当局者によって電力の抑制策が取られている地域は広範囲にわたり、面積にして英国、ドイツ、フランス、日本を合わせた規模に相当する。

中国でこれほどエネルギー不足が深刻化するのは2011年以来だ。同年は干ばつと石炭価格の高騰を受け、17の省、自治区が電力の使用制限を余儀なくされた。火力発電所は石炭の価格が高い時には大規模な発電を控える。電気料金は政府の統制下にあるため、電力会社が自主的に値上げするのは不可能だ。

電力が不足すれば、生産高の減少が経済のほぼすべての領域で起こり得る。重要な建設業や製造業も例外ではない。国家統計局によれば、これらの産業は昨年、国内の電力の7割近くを使用。今年の景気回復でも主要な原動力となっている。

中国で生み出される電力の60%あまりは石炭火力由来となっている

ここまで、一部地域における極度の気温上昇が電力需要の拡大を引き起こした。人々が冷房・冷蔵設備をより多用するようになっているからだ。

また石炭は依然として国内の発電の60%あまりを賄うエネルギー源だが、政府はこの比率がこれ以上増えることに神経をとがらせている。60年までに二酸化炭素排出量を相殺する「カーボンニュートラル」を実現するべく、石炭消費の削減に取り組んでいることが背景にある。

電力不足は向こう数カ月にわたって継続する公算が大きい。特に夏場、気温が例年より高くなれば南部や中央部で電力の供給制限が続くリスクが「依然として大いにある」と、金融情報会社リフィニティブのアナリスト、ヤン・キン氏は指摘する。

「中国の電力供給が直面する課題は、高まる電力の必要性を満たすことと脱炭素化の目標とをいかに両立させるかだ」(キン氏)

中国は数多くの再生可能エネルギー源の開発にも取り組んでいるが、キン氏によればそれらはまだ、化石燃料由来のエネルギーほどの安定性を持ち合わせていない。

例えば雲南省にある水力発電の主要拠点では、干ばつの影響で貯水池に蓄えておかなくてはならない水の確保が難しくなっているという。

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