管理職が語るリモートワークへの本音

新型コロナウイルス感染症の流行により、世界各地で広がったリモートワーク。リモートワークに対する管理職の「本音」は/Shutterstock

2021.06.28 Mon posted at 07:30 JST

(CNN) 多くの企業は従業員の働く場所や時間について、以前よりも柔軟に対応するようになってきた。だが、リモートワークを実際に管理する上司やマネジャーといった管理職の誰もがこうした動きを手放しで喜んでいるわけではない。

管理職の中にはリモートで働いている人から直接報告が来ることについて問題ないと考える人もいれば、部下と一緒に現場で顔を合わせて仕事をしたい人もいる。これまで対面でチームを管理していた彼らは、2020年に一夜にして完全にリモートで管理するという方向転換を迫られた。

米調査会社ガートナーが最近実施した顧客調査では、管理職の40%以上が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が発生する以前よりも多くのストレスを感じており、労働時間も長くなったと回答している。

だが、管理職はまたもや方向転換を迫られている。今度は、週に数日のオフィス勤務とリモートワークを組み合わせた「ハイブリッド型」の勤務スタイルで働くチームを管理しなければならないことについて、彼らは実際にどう感じているのだろうか。CNN Businessに寄せられたメッセージを紹介しよう。

部下を追いかけるのは苦痛

アトランタの銀行でファイナンシャルアドバイザーのアシスタント40人を管理していたロリ・スミスさんは、社員の柔軟性を高める点ではリモートワークを支持するが、特定の部下を常に追いかけなければならないという負の側面もあると指摘した。

スミスさんによると、部下の大半はここ1年の仕事ぶりも良く、連絡もスムーズに取れていた。だが、連絡がうまく取れず、勤務時間中に電話をしても数時間連絡がつかなかった部下もいた。「忙しい」「用事があった」などと言われたほか、理由を告げられなかったこともあった。

疲れ果ててしまったスミスさんは、週7日勤務で「ワーク・ライフ・バランス」が取れなかったことから、つい最近仕事を辞めたばかりだ。それでも業務の7割はリモートでできるため、元部下たちはハイブリッド型の勤務スタイルでうまくやっていけると信じている。

またスミスさんは、管理職へのアドバイスとして、新しいハイブリッド型の勤務スタイルがどう機能するかについてチームメンバー全員の賛同を得ることや、部下に出社してもらう際にはトレーニングや生産性の向上など、正当な理由があることを確認することを勧めている。

ハイブリッド型は完全リモート型より優れている

アリゾナ州にある教育関連企業のコールセンターでマネジャーを務めるダイアナ・ギャレットさんは、現在のような完全リモート型ではなく、ハイブリッド型の勤務スタイルを望んでいる。

パンデミックが発生した当時、ギャレットさんは入社してわずか3カ月、フルタイムでオフィス勤務だった。だが、オフィスの閉鎖によって勤務スタイルも完全リモート型に移行。他州を拠点にする社員も採用したため、現在のチームメンバー25人のうち、直接会ったことがあるのは12人のみという。

個人的なやり取りができなくなった今、オフィスだったら5分程度で終わる会話が、今では倍以上の時間がかかることもあり、ギャレットさんは「仕事内容は変わらないのに、今まで以上に時間がかかるようになった」と嘆く。

また、チームのメンバーとオフィスで一緒に働けば、チームがいつ自分のサポートを必要としているのかを正確に把握できるが、今はそれができないため、「ストレスを感じており、対面で会話がしたい」と語った。

ロバート・アレンビーさんの自宅のオフィス

その挑戦、受けて立とう

サンディエゴにある中堅法律事務所でマネジングパートナーを務めるロバート・アレンビーさん(55)によると、彼の事務所では弁護士だけでなく大半のスタッフが、裁判の準備などでオフィスにいる必要がない限り、週2~3日ほど在宅勤務を導入する計画だ。

アレンビーさんは「従業員に在宅勤務をさせることに抱いていた不安の多くは、価値がないことが証明された。在宅勤務によって生産性や収益性は失われなかったし、それどころか社員のやる気が向上した」と話す。

アレンビーさんは自分よりも若い弁護士の中にはリモートワークに積極的でない人もいることに驚いている。「オフィスの椅子から離れたがらないような若い弁護士がいて、『なぜ?』と思うが、彼らに積極的に関わり指導して快適に過ごせるようにすることが我々の役目だ」と語っている。

在宅勤務でも生産性は変わらない

レネ・コルテスさんは、医療機器メーカーで十数人の営業・サポートチームを管理している。コルテスさんは以前、「リモートワークでは生産性が低いと思われるのではないか」と心配していたが、この1年の在宅勤務を通じて、それが全くの取り越し苦労であることが分かった。

コルテスさんは「在宅勤務でも生産性は以前と変わらない。通勤時間がなくなったことで、その時間を顧客や担当者のサポートに充てることができる」と話す。パンデミック以前は出張も多く、空港で仕事の電話を受けることもあったが、今は自宅の静かな空間で電話に出ることができ、より効率的に仕事ができるようになったという。

それでも、オフィスでの会話や顧客との交流が恋しくなったため、現在彼のチームは月曜日と金曜日以外はオフィスに出社している。こうしたハイブリッド型の勤務スタイルについて、コルテスさんは今のところ非常に満足しているようだ。

「ハイブリッド型は今後、最良の働き方になると思う。チームに独立性を与えつつ、重要な時期には一緒に対面で仕事ができ、私自身もより効果的、効率的にチームを管理できる」(コルテスさん)

フリーランスのTVプロデューサーとして働くデニス・マイヤーさん

管理職の仕事が増える

ロサンゼルスでフリーランスのTVプロデューサーとして、グラミー賞などの番組制作や予算管理を行うデニス・マイヤーさんは、とりわけ特定の業務のために現場にいる必要がなければ、リモートワークには価値があると考えている。だが、全員がリモートで働いている日には、本来ならば誰かに任せる仕事も自分でやることになるという。

マイヤーさんは「常に『自分でやったほうが早いのではないか』と考えてしまう。同じ部屋にいる誰かに自分で話しかけることほど、早くて実用的なものはない。誰かに頼もうと電話をしたり、メッセージを送ったりすることで貴重な時間が無駄になる」と語る。番組の放映や収録が近づき、多くの決断や変更をしなければならない時は特にそう感じるといい、「誰かが近くにいてくれればいいのだが」と話している。

会議室に一緒に入る機会を失った

トレイシー・シューマッハさんは、ニューヨーク州シラキュースにある電力会社のサービスプロバイダーで、11人のソフトウェア開発者とテストエンジニアのチームを管理している。パンデミック以前はフルタイムのオフィス勤務だったが、パンデミック以降は完全にリモートで仕事をしている。だが彼女は現在、7月中旬から週3日どの曜日を在宅勤務とするかについて、チームのメンバーに希望を聞いているところだ。

シューマッハさんは、完全リモート型によるチームとしての経験はおおむね成功だったが、パンデミック時に採用した新入社員の受け入れや、若手社員の育成は大変だったと振り返る。また、グループ通話では誰が話したいのかが分かりにくく、メンバーの半分は黙っていることが多いという。

シューマッハさんは「我々は会議室に一緒に入り、ホワイトボードに解決策を書き出すといった機会を失ってしまった」と述べたが、ハイブリッド型の勤務スタイルによってこれらの問題は解決できると考えている。

ハイブリッド型の導入によって、若手社員による積極的な参加も増える見込みだ。だが、チームのメンバーは週の大半が在宅勤務のため、彼らを育成するには特別な配慮が必要で、「若手社員は、自分から質問することに抵抗があるかもしれないので、そこが課題だ」とシューマッハさんは話す。シューマッハさんは、チーム全員がハイブリッド型の勤務スタイルを取り入れれば、オフィスで過ごす数日間はより生産性が高くなると期待している。

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