台湾の外交部長、中国との軍事衝突に「備えが必要」 CNN EXCLUSIVE

台湾の呉釗燮外交部長がCNNの取材に応じ、対中衝突に備える必要性を強調した/CNN

2021.06.25 Fri posted at 17:00 JST

台北(CNN) 台湾の呉釗燮(ウーチャオシエ)外交部長(外相)が23日、CNNの単独インタビューに応じ、中国の台湾に対する軍事的な威嚇が増す中で、台湾は生じうる軍事衝突に「備える必要がある」との認識を示した。

中国は先週、台湾が宣言する防空識別圏に戦闘機や爆撃機など28機の軍用機を飛ばし、1日の飛来数としては過去最大を記録した。台湾の領空や国際法を侵す行為はなく、人民解放軍空軍による示威行動だったと見られている。

呉氏は「台湾の決定権者として、リスクはとれないので準備が必要だ」と述べ、「中国政府が武力の行使を放棄せず、台湾周辺で軍事演習を行うなら、それは本当にあると考えた方がいい」と警戒感をにじませた。

呉氏は2018年に外交部長に就任。記者会見で、中国から攻撃を受けたら「最後の最後まで戦う」と発言し、中国からは「筋金入りの分離主義者」と批判されている。

台湾関係の事務を担う中国の国務院台湾事務弁公室の報道官は、「『台湾独立』を止めるのは海峡間の平和関係維持に向けた必要条件だ」と述べ、独立をあおる呉氏のような分離主義者を厳しく処罰するためにあらゆる手を尽くすと語った。

呉氏は中国共産党のターゲットになるのは「光栄だ」と述べ、「独裁主義は真実に耐えられない。彼らが私を生涯追うと言い続けても、私はそれを本当に心配したりはしない」と語った。

軍事演習後、補給船の甲板で台湾の旗に敬礼する海軍兵士

台湾海峡の緊張

台湾と中国本土は70年以上前の国共内戦の後別々に統治されてきた。台湾に逃れてきたのは敗北した国民党だ。

中国共産党はこの2400万人が暮らす民主主義の根付く島を一度も統治したことはないが、不可分の領土と位置づけている。

19年には中国の習近平(シーチンピン)国家主席が台湾に「平和的な統一」を呼び掛けたが、武力行使の排除は拒否した。台湾にとって中国の軍事行動の脅威は常に懸念点となっている。

もろい現状維持の状況は約30年前に出現した。当時の台湾の国民党政権と中国は「一つの中国」に関する合意をし、双方が異なる解釈を適用してきた。政治は後回しにすることで、台湾海峡をまたぐ経済や文化面の交流が数年間盛り上がった。

だが、蔡英文(ツァイインウェン)総統や民進党は「九二共識」として知られるこの合意を長年にわたり拒絶。蔡氏は中国に対し、台湾の主権と市民の意志を認めるように繰り返し求めている。

呉氏は香港の状況を見れば中国との統一は受け入れられないと発言。台湾の主権を守ることが、世界で唯一の中国語を話す民主国家としての地位を守るうえで重要になると語った。

香港の国家安全維持法は、香港の民主化運動を沈静化するために適用されたとも指摘。この包括的な法律で、国家転覆や分離独立、外交勢力との結託と当局にみなされる行為はすべて犯罪となり、報道の自由の侵害や民主派の活動家の投獄にも同法が適用されていると語る。

「香港の状況を見れば、これは現代の悲劇だ」(呉氏)

香港最大の民主派のタブロイド紙「リンゴ日報」の廃刊にも触れ、特別行政区での自由に対する寛容さが失われている兆候だと語った。

「台湾は既に民主主義国家だ」「台湾の人々の圧倒的多数があることにノーと言えば、その考えを受け入れる政治指導者はいない」

呉氏は台湾の人々が、民主的に選ばれた総統や議会、別個の軍隊、独自のビザやパスポートを発給する権限などの現状の維持を望んでいると言及。そして「現状維持には中華人民共和国による運営や支配のない台湾も含まれる」という。

ただ、台湾が台湾海峡をはさんだ平和の実現に向けて協力する意思はあるとも発言。中国の指導者に対し、持続可能で平和的な共存を目指してともに努力するように呼び掛ける。

「台湾と中国の間に平和的で礼節のある関係を築くこと、そして対話を始めることは両者の共同の責任だと思う」

「台湾の人々が欲しいのは平和であり、台湾政府も同じだ。平和のほかに台湾と中国の間で対話をしたい。もちろん両者に責任がある」

今年1月、領土侵攻を想定して高雄近郊で実施された軍事演習の様子

様々な手段での戦闘行為

呉氏は中国が台湾付近に軍用機を送り込むほかにも、民主主義への信頼感を損なおうと様々な手段で戦闘行為を仕掛けてきていると非難する。

「(中国は)認知戦争、誤情報のキャンペーン、軍事的威嚇で台湾の多くの人々を不安にさせている」

呉氏は、中国政府が支援する組織が台湾の人々の分断を狙って、フェイクニュースを流していると批判。新型コロナウイルスの死者数を誇張したメッセージを広めたり、最近250万回分のワクチンを寄贈した米国が、台湾にワクチンを送るよりペットへの接種を優先しているという誤情報を流したりしているという。

台湾事務弁公室は台湾からの批判について「空想」であり、新型コロナウイルスの流行開始以降最悪の感染状況から目をそらそうとする「政治ゲームはやめるべきだ」と反論している。

呉氏は中国が南シナ海やそれを越えて領土的野心が膨らんでいる点にも触れ、台湾の重要性を強調する。

「それはまさに自国の影響を拡大しようとする中国の独裁政治だ。自国の国境をはるか越えて、西半球にまで伸びていく」

呉氏は中国の軍事予算は台湾の約15倍に及ぶとしつつも、台湾も軍隊の改革を進め能力の向上に努めていると語る。

「我々は非対称な戦闘行為に臨まなければいけない。中国には、もし台湾相手に戦争を仕掛けようと思ったら、払わなければならない確かな代償があると理解させる必要がある」

台湾の外交部長、中国との衝突に「備え必要」

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。