香港「リンゴ日報」が廃刊に、中国政府の締め付け強まる中

香港の民主派紙「リンゴ日報」=2020年8月11日、香港/ISAAC LAWRENCE/AFP/AFP via Getty Images

2021.06.24 Thu posted at 11:10 JST

香港(CNN Business) 香港の民主派紙「リンゴ日報」を運営する「壱伝媒(ネクストデジタル)」は23日、24日付の新聞を最後に廃刊すると発表した。記者が逮捕され資産が凍結されるなど、事業継続が不可能な環境になったことを理由に挙げている。デジタル版も同日に運営が終了する。

廃刊の発表を受け、香港のメディア業界には衝撃が走った。香港政府は昨年、新たに導入された国家安全維持法(国安法)でメディアの自由が縮小することはないと主張していたが、その主張が崩れた形だ。

国安法は昨年、中国共産党が香港議会を介さずに施行した。政府転覆や分離、テロ、外交勢力との共謀とみなされる行為に最高終身刑を科す内容となっている。


香港の民主派紙「リンゴ日報」=2020年8月11日、香港/ISAAC LAWRENCE/AFP/AFP via Getty Images

香港の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官は当時、メディアの自由は保護されると述べていたものの、リンゴ日報の職員は、同紙が標的にされるのは時間の問題だったと話す。

身の安全への懸念から匿名で取材に応じた記者の1人は、「これが起きた時は、やはりショックだった」と語った。

リンゴ日報の強制捜査に着手する警官=17日、香港

同法の施行以来、リンゴ日報は徐々に打撃を受けてきた。創業者の黎智英(ジミー・ライ)氏は逮捕され、国家安全保障を損なう目的で外国勢力と共謀した罪で訴追された。同紙の編集幹部や経営陣のうち5人も、外国政府に対香港制裁を呼び掛けるために記事を利用したとして、ライ氏と同じ罪に問われている。

同紙の編集室には警官数百人が2回にわたって強制捜査に入り、直近の捜査ではコンピューターや資料を押収した。リンゴ日報の記者数人はすでに今月、仕事の報酬が収監されるリスクに見合わないとして辞職していた。

当局が同紙への圧力を強める中、市民から寄せられる支援はむしろ増えた。18日に編集幹部が逮捕された後には、50万部を刷って完売した。

だがそれも、香港当局による財務面の締め付けに対抗するには不十分だった。ネクストメディアは投資家に対し、4月から18カ月間分の運転資金があるとしたものの、同紙の銀行口座は最近凍結された。

23日には同紙の将来を話し合う取締役会が開かれた際、警官がまたも編集室に立ち入り、記者1人を逮捕。その数時間後、同紙は26年の歴史に幕を下ろすと発表した。

香港「リンゴ日報」が廃刊を発表

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