ガザから飛ぶ「風船爆弾」とは? イスラエルとハマスの新たな火種を解説

ガザ市東部で風船爆弾の準備をする武装勢力=16日/Majdi Fathi/NurPhoto/Getty Images

2021.06.18 Fri posted at 20:13 JST

(CNN) イスラエル国防軍は、数十もの「風船爆弾」を同国へ向けて放ったとして、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配する武装組織ハマスを標的とした空爆を実施した。

当局の発表では、風船爆弾による火災が15日に少なくとも20件発生。パレスチナ側のメディアは、報復としてイスラエルが実施した空爆により物的被害があったものの、犠牲者はいなかったと報じた。

16日にはさらに多くの風船が放たれ、イスラエルの消防および救急当局によると少なくとも4件の火災が発生した。

武装勢力側は数年にわたりイスラエルに向けて風船爆弾を放ってきたが、今回ガザ地区を狙うイスラエル軍の報復爆撃は今まで以上の激しさとなっている。これについてイスラエル当局は、ハマスに対していかなる挑発も武力で応じるとのメッセージの一環だと話している。


覆面をした「イスラム・ジハード」の支持者が風船爆弾を飛ばす=15日/Mahmud Hams/AFP/Getty Images

先月発生したガザ地区での軍事衝突時に閣僚を務めていたイスラエル・カッツ前財務相は、この軍事作戦の後に「方針の変更を決めた」とツイート。「イスラエル内での全ての攻撃に対しては、狙いを定めた暗殺、ハマスを標的とした大規模な攻撃が実施される」と述べた。

ここでは風船爆弾について、そしてそれが現在の緊張関係にどう影響するのかをまとめた。

風船爆弾とは何か?

風船爆弾の仕掛けは、比較的シンプルだ。

子どもたちの誕生日パーティーの飾りでしばしば目にするような、ヘリウムガス入りの風船に、前もって着火させた爆発物や装置が装着してある。

武装勢力の戦闘員らはガザから風船を放ち、風船は地中海から吹く風の力を得てイスラエル領内に飛来する。

イスラエル南部の畑が風船爆弾で火災に=5月9日

風船爆弾の目的は?

風船爆弾は人々に恐怖を与え、被害をもたらし、火災を引き起こすことを目的としている。ガザ地区に接して取り囲む土地の多くは、野原や自然保護区、農地だ。

住宅街に落下してけが人や損害を出し得る爆発物の場合を除き、風船による火災は作物や自然保護区を炎上させる。

イスラエル国防軍の報道官の発表によれば、飛来した発火物により2018年以降、領内の土地1万400エーカー(約4200ヘクタール)超が焼かれたという。この数値には15日の火災は含まれていない。

これまでのところ、発火物によって犠牲者が出たとの当局発表はない。

なぜ今回はミサイルではなく風船爆弾なのか?

風船爆弾は、ミサイルを発射した場合にしばしば起きるイスラエル軍の全面的な報復を招くことなく、ガザ地区の武装勢力が同国にメッセージを送るための安価な方法となっている。

イスラエル軍がハマスを標的にした空爆を再び実施=15日

高価で製造に時間がかかるミサイルに比べ、風船爆弾の製造は簡単で、飛ばすための準備もほとんど必要ない。

15日に飛来した風船爆弾は、エルサレム市内での右派勢力による挑発的な行進の実施をイスラエル政府が認めた決定に対する報復とみられている。

新首相の風船爆弾に対する姿勢は?

同国のナフタリ・ベネット首相はこれまでネタニヤフ前首相に対し、ハマスや風船爆弾の飛来に対してより強硬な姿勢で臨むように迫っていた。イスラエル人の居住地に向られたロケット攻撃と同様の措置を軍は取るべきだとも話してきた。

11日間続いた先月の軍事衝突の後、イスラエル当局は、風船爆弾を飛ばすような行為にもより強力な武力行使で応じると示唆しており、現状はその通りになっているように見受けられる。

同首相は教育相を務めていた18年、そうした発火装置を境界線越しに放つ者は皆、軍が射殺すべきだと発言していた。

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