バイデン氏とプーチン氏が初の首脳会談 5つのポイント

ロシアのプーチン大統領との会見後、記者会見場に到着したバイデン氏=16日、スイス・ジュネーブ/Patrick Semansky/AP

2021.06.17 Thu posted at 11:07 JST

ジュネーブ(CNN) バイデン米大統領は16日、スイス・ジュネーブでロシアのプーチン大統領と初の首脳会談に臨んだ。入念な調整や準備を経て別々の記者会見場が用意された会談だったが、両国間の関係にほとんど変化はなかったように見られる。

プーチン氏との「予測可能で合理的な」関係構築というあいまいで控えめな目標を掲げていたバイデン氏にとって、この結果は驚きではなかった。プーチン氏の姿勢は完全に合理的ではなかったとしても、確かに予測可能だった。

つまるところ、バイデン氏はプーチン氏が会談に現れさえすれば五分だとの低い期待しか抱いていなかった。

会談時間は予定より短かかったが、ホワイトハウス関係者によると両国間の大きな問題を予兆するものではない。バイデン氏は互いに話すことがなくなったからだと打ち明けた。

今回の会談の成果は、両国の大使復帰やサイバー攻撃に関する対策部会の立ち上げという控えめなものだ。両国間では新たな最大の対立点になっていたと見られる。両首脳とも会談は大きな進展を意図したものではなく、信頼の醸成や今後の前進を目的としたものだったと位置付けた。

会談のポイントを5つにまとめた。

率直な関係

バイデン氏が首脳会談の開催を決めたのは自身の外交観にある。外交は人物に帰着するものだとの考え方だ。

バイデン氏は会談後の記者会見で、「外交政策とは何か暗号のような、すごい技術であるかのような印象があると思うが、全ての外交政策は個人的な関係の合理的な延長だ。人間性が機能するものだ」と述べた。

その観点から見れば、今回の会談は目標を達成したように見える。

バイデン氏は「会談全体の雰囲気は良好で前向きだった。重要な点としては、プーチン大統領と我々が従うことのできるいくつかの基本ルールを持つ必要があると話せたことだ」と語った。

プーチン氏も同様の見方を示し、「彼はバランスの取れたプロの男で、経験豊かなのは明らかだ。我々は同じ言葉を話していたと私は感じた」と話した。

それでも、西側の能力や報復の意思を試そうとする敵対的行為を変える兆候は一切示さなかった。反体制派指導者アレクセイ・ナバリヌイ氏を非難し、サイバー攻撃でロシアが果たす役割を否定するなど、その言葉に変化はなかった。

率直で実務的な3時間だったものの、「互いの目を見て、魂が通じるものを見つけたり永遠の友情を誓うようなものでなかったことは確かだ」とも語り、深い感情的なつながりには至っていないと述べた。

トランプ氏とは違う

バイデン氏チームの最優先の目標は、2018年にヘルシンキで行われた米ロ首脳会談の再来を防ぐことだった。当時のトランプ米大統領はプーチン氏と1対1の2時間に及ぶ会談に臨み、選挙介入に関して米情報機関よりもロシアの言葉を信じる発言が飛び出る結果となった。

同じような展開を避けるため、チームは共同記者会見の開催に反対した。

今回の会談は間違いなく違うものとなった。プーチン氏もそれに気づき、「彼の前任者とは違う見方をしている」と述べた。

バイデン氏は選挙介入や人権など、ロシアと対立する分野でトランプ氏が無視したり大きく扱わなかったものを率直に取り上げた。

ただ、似た点が1つあった。記者会見場を去るときやジュネーブ空港で、記者による今回の会談の位置付け方に文句を言った点だ。「いい記者になるには否定的にならなければならない。あなた方は決して前向きな質問をしない」との発言が飛び出た。

こうした否定的な質問に対する注意は前任者からも容易に飛び出してきただろう。

プーチン氏の地位を高めた

プーチン氏との会談の意義に懐疑的な人々は、バイデン氏が早期の会談を設定することで、プーチン氏の地位を世界の舞台で高める結果になるのではないかと疑問を呈していた。

バイデン氏の側近はこのリスクを警戒し、共同記者会見に反対してプーチン氏がバイデン氏と並び立つ景色を避けた。

だがバイデン氏は会談で自ら、ロシアと米国は「2つの大国」だと述べた。これまで米当局者がロシアの影響力を控えめに扱おうと努力していた姿勢に比べると、特筆すべき言葉の選択だ。オバマ元大統領でさえ、ロシアがクリミア半島に侵入した後、単に「地域の大国」と表現していた。

プーチン氏は長年、西側諸国を試しながらも、西側から尊重されることを追い求めてきた。今回の会談に批判的な人々は、確固たる成果がなければ、プーチン氏に正統性の雰囲気を与えるだけの写真撮影会とほぼ変わらないと主張した。

バイデン氏の冒頭の言葉は、会場に入ろうとする記者団の押し合いで完全に聞き取れなかったが、大国のリーダーは相違点があっても互いに折り合いをつける方法を探さなければならないと言っている様子だった。

ロシアのプーチン大統領との会見後、記者会見場に到着したバイデン氏=16日、スイス・ジュネーブ

プーチン氏の調子は変わらず

プーチン氏は会談が「建設的だった」と認め、「双方が互いを理解し、立場を合わせようとする決意を示していたと思う」と述べた。

ただ、サイバー犯罪や人権、ウクライナの問題に関して問われると、いつも通りのあいまいで否定に満ちた姿勢を示した。

これは米当局者にとって何の驚きもない。当局者はバイデン氏が会談でプーチン氏の言葉や行動を魔法のように変えるとは思っていなかった。またこうした発言は、公の場では米国の懸念を無視する一方で、米国との関係深化を働きかけるプーチン氏の発言としても合わないものではなかった。

ただ、今回の会談で一つ違うのは、プーチン氏の姿が届く範囲だ。高い注目を浴びていた米国大統領との首脳会談で、彼の発言は世界中に伝わり、米国のテレビネットワークにも乗った。

プーチン氏の記者会見はバイデン氏の会見前に行われたため、バイデン氏はその多くの点で反論の機会を得た。ただ、プーチン氏の言葉は、重要な問題の存在すら認めない相手と対峙(たいじ)するバイデン氏が抱えている困難を浮き彫りにするものだった。

サイバー戦争

バイデン氏はプーチン氏との会談に臨むにあたり、サイバー攻撃、特に最近のロシア国内の犯罪集団によるランサムウェア(身代金ウイルス)を使った攻撃が主要なテーマになることを明確にしていた。

バイデン氏は、ロシアのような国は自国から発生するサイバー犯罪を抑え込む義務があると考えている。先ごろ行われた主要7カ国首脳会議(G7サミット)や北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でも、最終声明にバイデン氏の立場を支持する文言を含めるように各国首脳を説得した。

今回の会談の主要な、そして唯一の成果は、専門家に対し禁止事項に関する具体的な合意に向けた作業や、具体的な事件の追跡を指示する点で合意したことだった。

バイデン氏はこの合意の限界もわかっている様子で、「原則は一つだ。実行による裏打ちがなければならない」と述べた。

バイデン氏はプーチン氏に米国が「多大なサイバー能力」を有しており、さらなるサイバー攻撃には報復すると伝えた。

ただ、バイデン氏の問題提起はプーチン氏の口調にほとんど変化をもたらさなかった。プーチン氏は米パイプライン運営会社コロニアル・パイプラインへのサイバー攻撃に触れて、「ロシア当局がこれに何の関係があるというのか」と問いを投げかけた。

それでも、米当局者にとってこうした反応は驚きではない。米国側としては、サイバー犯罪が急速に発展する脅威となっており、バイデン氏がサイバー犯罪が招く明確な結果をロシア側に伝えることを目的としていた。

バイデン氏とプーチン氏が初の首脳会談

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