「泡のバリアー」がプラスチックごみを収集 海への流出防ぐ

泡のバリアーは船の通過を邪魔しない/The Great Bubble Barrier

2021.06.10 Thu posted at 06:47 JST

(CNN) 古いテレビに道路標識、バイク用のヘルメットにウィンドサーフィン用のボード、さらにはクリスマスツリーまで――。これらは、オランダの首都アムステルダムにあるウェステルドック運河を漂っていたところを、泡を使ってつかまえたごみ類だ。

「バブルバリアー(泡の障壁)」と呼ばれるこのシステムは、プラスチックごみが水路から海へと流出するのを食い止めるシンプルな手法として開発された。エアコンプレッサー(空気圧縮機)が運河の底を斜めに横切って設置されたチューブに空気を送り、チューブに空いた穴から出てきた泡の流れが、ごみをとらえてごみ集積システムへ誘導する。

このシステムを支えるオランダの社会的企業「グレートバブルバリアー」の共同創業者で、最高技術責任者(CTO)を務めるフィリップ・エルホルンさんは、運河から川、さらには北海へと流出するはずだったごみの86%をとらえると話す。

バブルバリアーはアムステルダム市当局および同地域の水道局の認可を得て、2019年10月、5時間もかからずに設置された。

網や柵のように川を塞いで、水中生物の生態を混乱させ、船の航行を妨害する物理的な障壁を設置することなくプラスチックごみをとらえるのがエルホルンさんのアイデアだ。


ごみは泡で水面へと持ち上げられ、集積システムに誘導される

斜めに設置された装置から出る泡に沿ってごみが進む

騒音を最小限に抑えるため、圧縮機はバリアーから50メートルほど離れた位置にある、リサイクルした海運用のコンテナの中に設置され、再生可能エネルギーによって稼働する。

泡のカーテンは1ミリの大きさのプラスチックまでとらえることが出来るが、ごみの集積システムは10ミリ以上のものしか保持できないようにしている。水面を漂う小さな水中生物が泡の流れにつかまっても、時間が経てばごみ溜めを通り抜けることが出来るという。

泡に誘導されたごみは右下に見えるごみ集積システムにたどり着く

ドイツ出身で、造船および海洋工学を学んできたエルホルンさんは、短期留学したオーストラリアで環境工学を学ぶうちにバブルバリアーの着想を得た。汚水処理施設では、酸素の泡を利用して有機物を分解している。

バブルバリアーを「ジャクジーのようなもの」と評するエルホルンさんは、「私が気づいたのは、トイレから流れてきたプラスチックの一部が隅に集まっていたということ」だと説明。この観察が彼の案、そして後にバブルバリアーを支える技術を芽生えさせた。

その一方でエルホルンさんとは別に、アムステルダムではオランダ人の女性3人が全く同じアイデアに取り組んでいた。3人はある日の夜、バーでプラスチックごみについて議論を交わしていたところ、ビールの泡を見てインスピレーションが湧いたという。

すると偶然にもエルホルンさんの友人が、プラスチックごみを自然からなくす解決策を募るコンテストのために3人が用意したプレゼンテーション動画を目にすることに。エルホルンさんは「同じ構想と使命を抱いていることが分かり、すぐに連絡を取った」と回想し、「私の案を伝えて、翌日にはオランダへ向かったよ」「4人で一緒にアムステルダムの川で、シンプルだったアイデアを、バブルバリアーの実験的取り組みとして十分なものに育て上げたんだ」と話した。

海鳥の保護に取り組む生態学者でプラスチック汚染を研究するステファニー・B・ボレル氏は、バブルバリアーについて「本当に興味深い」と評価。一方で、幅の広い川での適性や、電気や保守が必要な点から発展途上国での利用について疑問を呈する。また、重いプラスチックのかけらは泡で持ち上がらず、船の交通量が多いとごみの集積が妨げられる可能性も指摘する。

オランダ各地やポルトガルやインドネシアにもバブルバリアーを設置する計画がある

それでも「いくつか制約はあるが、既に環境に存在するプラスチックへの対応策として我々が有している道具類の重要な一部だ」と述べ、あらゆる角度からプラスチックごみ除去に取り組む必要性を説いた。

現在のところ、同社のチームはアムステルダムの水道局と共同で事業に取り組み、つかまえたプラスチックの種類の分析やその発生源の特定を進めている。プラスチックごみに関する新たな指針の策定につなげたい考えだ。

同局は週に3回、ごみ溜めからごみを回収し、分別のため廃棄物処理施設へ移送。条件に適合するものはリサイクルに付している。

営利企業である同社は、オランダ各地、さらにはポルトガルやインドネシアにもバブルバリアーを設置する計画だという。

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