子犬は生まれつき人間とコミュニケーション可能 米研究

研究にはラブラドールレトリバーかゴールデンレトリバー、あるいは両者の雑種の子犬が参加/Courtesy Emily Bray/Canine Companions for Independence

2021.06.04 Fri posted at 19:47 JST

(CNN) 子犬は生まれた時からすでに、人間とコミュニケーションする準備ができている――。学術誌「カレントバイオロジー」に3日、そんな論文が発表された。

研究を手掛けたのは、米アリゾナ大学人類学部のアリゾナ犬認知センターに所属する博士研究員、エミリー・ブレイさん。

ブレイさんは「子犬はごく小さい頃から、人間の視線を見つめて視線を返し、人間から与えられた社会的な文脈を持つ情報を上手に使う。人間と幅広く接した経験が一切ない時からだ」と指摘する。

ブレイさんはこの10年間、非営利団体キャナイン・コンパニオンと共同で盲導犬の発達を研究してきた。同団体は体や認知能力の障害を抱える大人や子ども、退役軍人に犬を無償提供している。

盲導犬などの補助犬の集団は研究対象として優れている。こうした犬の多くは何世代にもわたり系図がわかり、ほぼ同じような方法で育成や訓練が行われる。そのため、犬の行動のどの程度が遺伝に起因し、どの程度が訓練によるものか、判断するための選択肢がより多く与えられる。

多くの子犬で実験

論文によると、ブレイさんらの研究チームは今回、生後8週間の子犬375匹を対象に、各種の社会認知指標による評価を行った。使用した指標はすでに大人の犬に適用したことがあるものだった。

タスクの一つは研究者とのアイコンタクト。別のタスクでは、左右1.3メートル間隔に置かれたコップ2個の下におやつを隠し、研究者の手ぶりと視線を追いかけてもらった。研究チームは左右のコップに均等におやつを隠した。

生後8週間の子犬がえさの隠されているカップを指し示す人間のジェスチャーを追う様子

子犬375匹はいずれもラブラドールレトリバーかゴールデンレトリバー、あるいは両者の雑種で、まだ母親や他の子犬と一緒に暮らしていた。

実験の結果、子犬たちは指さしや視線を追いかけて、おやつが隠されているコップのみを見ることに「非常に高い能力」を示した。行動に学習が必要な証拠は出てこなかったという。

「大半の子犬は70%の確率で正しいコップを選んだ」とブレイさん。「完璧ではないが、これは明らかに偶然より高い確率だ」「生後8週間の時期でも、何かに気付いている」

実際、多くの子犬は全く訓練を受けていない1回目のテストの段階から、人間の手ぶりや視線を追って、隠されたおやつに行き着いた。

ブレイさんによると、人間の指さしや視線を追う子犬の能力のばらつきは、40%以上が遺伝で説明できるという。

「この計算を我々ができるのは、行動で示されたパフォーマンスと、すべての子犬が互いにどれほど近い血縁かを知っているためだ。遺伝的な根拠があることを示した初の直接的な証拠になる」とブレイさんは説明する。

環境もその後影響する

チームはその後160匹の子犬を大人になるまで追跡調査。同じ検査をして、子犬の時の行動が大人の時の行動を予言するものになるかを確かめた。

人間の赤ちゃんと同様、高めの声によく反応する

「ほぼすべての検査で、年齢と共に成績が向上した。特に衝動の抑制や社会的な手がかりといった分野でだ。若いときにできたものは、大人になるともっとよくできる」(ブレイさん)

この調査から、成長して補助犬として成功できる犬の特徴について、さらなる手がかりが得られるとブレイさんは語る。それがわかると犬の選択や訓練のプロセスがより効果的、効率的になるという。

「たとえば、子犬がどれだけ意欲的に目で合図をしたり視線をそらさなかったりするかで、成功する補助犬に成長できるかを予測できる」

今後はどの遺伝子がどの特徴に結び付いているのかを確認し、そうしたプロセスをさらに洗練させたい考えだ。さらに犬の高齢化による認知機能の衰えにつながる遺伝子も特定したいという。

ブレイさんは「子犬とやるべき作業はたくさんある。とても大変な仕事だが、誰かがやらなければいけない」と意気込みを語った。

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