スペースXの補給船打ち上げ、赤ちゃんイカとクマムシが宇宙へ

実験のため、発光するダンゴイカの赤ちゃん128匹が補給船でISSに送られた/Jamie S. Foster/University of Florida/NASA

2021.06.04 Fri posted at 17:45 JST

(CNN) 米スペースXは現地時間の3日午後1時29分、国際宇宙ステーション(ISS)に補給物資を届ける宇宙船を打ち上げた。補給船の打ち上げは22回目。今回は約3300キロ分の補給物資や実験機材などを搭載し、5日にISSとドッキングする。

同船にはクマムシ5000匹と、発光するダンゴイカの赤ちゃん128匹が乗せられている。

ISSではクマムシが宇宙環境にどの程度耐えられるのかといった実験を行うほか、無重力状態がイカと微生物との共生関係に与える影響を探る意向。

さらに、ポータブル式の超音波診断装置の実験や、仮想現実を使ったロボットアームの遠隔操作、宇宙で腎臓結石がどう形成されるかの分析、口内微生物の研究、圧力に強い綿の生産といった研究も予定している。

ISSでは日々、何百種類もの科学実験が進行中で、宇宙飛行士が観察結果を地上の研究者に報告している。そうした実験は、無重力状態での生活に関する理解を深めたり、地球上で応用できる成果を発見したりする役に立つ。

クマムシは顕微鏡で見るとクマのような姿をしている。水中に生息するごく一般的な生物だが、極端に過酷な環境でも生き延びられる能力で知られる。

今回のクマムシ実験を担うワイオミング大学のトーマス・ブースビー准教授は、「クマムシは乾燥したり凍結したり、沸点を超える温度で加熱したりしても生きていられる。私たちの何千倍もの放射線を浴びても生き続け、酸素が皆無またはほとんどない状態でも数日間から数週間は耐えられる」と解説する。

クマムシが宇宙に送られるのは今回が初めてではない。クマムシを積んだ宇宙船が月面に墜落したこともあり、月でクマムシが生きている可能性もある。

極端に過酷な環境でも生き延びられる能力で知られるクマムシ

ブースビー氏の実験の目的は、クマムシが地球を周回する軌道上での生活にどう適応するかを観察することにある。これによって、人間が宇宙空間で直面するストレス要因についての理解を深めたい意向。「宇宙飛行士を長期の宇宙滞在から守る助けになる対策や療法の開発につながることを期待する」とブースビー氏は言う。

一方、フロリダ大学のジェイミー・フォスター教授が主導する「UMAMI」実験は、ダンゴイカを使って超微小重力が動物と微生物との共存関係に及ぼす影響を探る。健康に役立つ微生物が宇宙空間で動物の組織にどう作用するかを見極めたい意向だ。

「人間を含む動物は、微生物に頼って健康な消化器系や免疫系を維持している」「宇宙飛行でそうした有益な相互作用がどう変わるかは、まだ完全に解明されていない。UMAMI実験は、暗闇で光るダンゴイカを使ってそうした動物の健康の重要な課題に対応する」(フォスター氏)

ダンゴイカは体長わずか3ミリほど。体内に特殊な発光器官があり、そこにすみついた発光微生物を使って発光する。この共生関係は1種類の微生物と1種類の宿主組織の間で成り立っているため、仕組みが観察しやすいとフォスター氏は説明する。

ダンゴイカの免疫系は、人間の免疫系とよく似ていることから、動物と微生物との相互に有益な関係が宇宙空間で変化した場合、そこから学ぶことができる。

「宇宙空間を探検する宇宙飛行士は、さまざまな種類の微生物を伴っている」「そうした微生物が宇宙環境でどう変化し、そうした関係がどう確立されるかを理解することは非常に重要だ」とフォスター氏は話している。

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