香港の天安門事件記念館が閉鎖、犠牲者追悼日の2日前に

香港の「六四記念館」で、天安門事件に関する展示品に見入る来館者/Isaac Lawrence/AFP/Getty Images

2021.06.03 Thu posted at 19:00 JST

香港(CNN) 民主化を求めて集まった人々を中国軍が武力で鎮圧した天安門事件を追悼する香港の施設「六四記念館」が、当局の指導により閉鎖を余儀なくされたことが分かった。事件から32年となる今月4日を迎える直前での閉鎖となった。

香港・九龍地区の旺角にある六四記念館は1989年6月4日に起きた天安門事件を追悼する大中華圏で唯一の場所だが、1日に食物環境衛生署の当局者が査察に訪れ、運営者に対し「公衆娯楽場所」として違法操業していると告げた。

同署はCNNへの声明で、必要な許可を得ずに娯楽施設が運営されているとの苦情を最近受けたと説明。「人を楽しませる」事業者はすべてこの許可が必要で、施設への入館料の有無は関係ないという。六四記念館は無料で入館できる。

香港では通常であれば6月4日に数万人の市民がビクトリア公園に集まり、天安門事件の犠牲者を追悼する。

昨年の集会は新型コロナウイルスの感染拡大を理由に中止されたが、今年も警察は同じ理由で中止を決定。先月29日に裁判所がこの決定を支持した。その翌日には六四記念館を開館した「香港市民支援愛国民主運動連合会」(支連会)が、同館での献花などで犠牲者を追悼するよう呼び掛けていた。

6月4日が近づく中、閉ざされた記念館の扉の前に献花する人も

香港では昨年6月に中国政府が施行した「香港国家安全維持法(国安法)」の下、香港の分離独立や政権転覆、テロ、外国勢力との共謀などが疑われる人物を権力機関が拘束できるようになった。

六四記念館を運営する李卓人氏は今年3月、CNNの取材で同館を案内した際に、国安法の影響で同館が永久に閉鎖されるかもしれないとの見方を示していた。

「(国安法は)常に刃物をのど元へ突き付けているようなものだ」「いつ首を切り落とされるか分かったものではない」(李氏)

李氏は今年の6月4日を獄中で迎えることになる。4月、2019年に無許可の反政府集会を開催、参加した罪に問われ、禁錮1年6カ月の判決を受けたからだ。ほかにも複数の行為で起訴されている。

六四記念館の展示物の多くは、天安門事件の犠牲者の親などが寄贈した遺品だ。そこには活動家がサインした北京大学のTシャツや労組関係者の脚から摘出した弾丸、現場にいた学生の持っていたカメラなどが含まれる。この学生は事件の様子を撮影中に射殺されたが、両親が死後にフィルムを現像。その写真も展示されている。

天安門事件を追悼、香港「六四記念館」の展示物

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