結党100年を迎える中国共産党、「赤い遺伝子」がかつてなく重要に

中国共産党の軍隊の旗が登場する演劇の一場面。先月初めに延安で上演された/Steven Jiang/CNN

2021.06.02 Wed posted at 06:59 JST

中国・延安(CNN) 中国共産党は断固として無神論を掲げる政治組織だが、党の起源に関しては宗教的な表現を使うことを好む。

党の文献や国営メディアでは、かつて共産党の拠点となっていた場所が「聖地」と位置付けられている。共産党への「信仰」の「洗礼」を授ける狙いから、一般党員がこうした場所を訪れるのはほぼ義務となっている。

共産党の幹部養成機関、中国延安幹部学院で教鞭(きょうべん)を取るワン・ドンチャン氏は先月11日、「毛沢東はかつて、人民こそ我々の神だと言った」「我々は人民をより良い未来に導くことを信念としている」と語った。

CNNはこのほど、他の海外メディア二十数社とともに、政府が主催する延安と西柏坡のツアーに参加した。どちらも「赤い史跡」として名高く、結党間もない中国共産党はこれらの場所で規模と勢力を拡大した後、激しい内戦を経て1949年に中国本土を掌握した。

中国共産党が7月に結党100年を迎えるのを前に、習近平(シーチンピン)国家主席の下ではこのところ、9100万人に上る党員の「赤い遺伝子」を強化することが最優先事項になっている。習氏は中国共産党の現トップで、中国の指導者としては中華人民共和国を建国した毛沢東以降、最も強力な存在だ。

習氏は党の機関誌に最近掲載された一連の発言の中で、党員に「赤い資源を活用し、赤い遺伝子を継承し、赤い国を世代から世代へと引き継ごう」と呼び掛けた。そして「赤い史跡」は今、習氏の取り組みの中でますます重要性が高まっている。

「赤い史跡」の一つ、延安で訪問客を出迎えるマスコット

延安でも西柏坡でも、大勢の訪問者(革命服をまとっている人もいた)が共産党指導者のかつての自宅や過去の党大会会場、数々の展示室に押し寄せていた。

党員たちは儀式のような形で、「いかなる時でも全身全霊を党と人民のためにささげ、決して党を裏切らない覚悟だ」という入党の誓いを改めて表明。屋外では、歴史が共産党員を中国の統治者に選んだ理由について、児童が授業を受ける姿もあった。

「紅色旅遊(レッドツーリズム)」の人気拡大に伴い、多額のお金も動いている。延安市だけを取っても、2019年には7300万人以上の観光客が人口200万人あまりの同市を訪れた。

ただ、こうした「赤い史跡」では、党の内紛や上層部の粛清、結党初期にさかのぼる激しい政治運動といった厄介な問題に触れられることはほぼない。

共産党ゆかりの地を訪ねる「紅色旅遊(レッドツーリズム)」は近年人気が拡大している

中国延安幹部学院に所属する歴史学者は、講義で党の失敗に触れていないわけではないと主張した上で、10年間に及んだ毛沢東の文化大革命のように党の歴史の最も暗い部分でさえ、中国における「社会主義建設の試み」という視点を通じて振り返るべきだと急いで付け加えた。文革を巡っては、数百万人が死亡したとの指摘もある。

取材班が訪れたあらゆる場所で、ある明確なメッセージが浮上してきた。中国の再生は毛沢東と習主席という2人の強力な指導者のおかげだ、というのがその内容で、2人の間の指導者についてはほとんど言及がなかった。

習主席をめぐるプロパガンダは1976年の毛沢東死後に導入された個人崇拝防止策と矛盾していないかとの質問に対し、延安で教鞭を執るワン氏は、共産党は桃のようなもので、一つの核しか持つことができないと示唆した。

「もし桃に二つの核があれば、それは変異だろう」(ワン氏)

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