ソ連版「スペースシャトル」、落書きで覆われる

放置されている旧ソ連の宇宙船「ブラン」。写真は2010年に撮影/Ralph Mirebs/Exclusivepix Media/Exclusivepix media via ZUMA Pres/ZUMAPRESS.com

2021.05.29 Sat posted at 18:25 JST

(CNN) カザフスタンの宇宙基地でこのほど、倉庫に放置されている旧ソ連の宇宙船「ブラン」の機体側面にスプレーで落書きされる事件があり、インターネット上で怒りや嘆きの声が上がっている。ただ、これを契機に機体の移動が実現する可能性もある。

現場はロシア首都モスクワの南東約2400キロに位置するバイコヌール宇宙基地。この場所には、米国のスペースシャトルによく似た形状の再利用可能な宇宙船「ブラン」が少なくとも1機眠っている。

ブランのミッションで完遂したのは、ベルリンの壁崩壊の1年前の行われた1988年のミッション1件のみだ。ソ連崩壊に伴って宇宙開発プログラムは停止され、最終的に打ち切りとなった。

現在は実物大の試験モデル1機がバイコヌールの博物館に収容されているほか、建物の屋根の崩壊で破壊された機体もある。この他に少なくとも1機が使われなくなった格納庫に保管されており、落書きの標的になったとみられる。

ロシア国営タス通信は今週、同国の宇宙機関ロスコスモスの話として、「身元不明の集団がバイコヌール宇宙基地の施設に侵入」して、ブランの側面に落書きしたと伝えた。

ブランが格納されている建物。2010年に撮影

その後、インスタグラムに落書きの写真が投稿され、この出来事に衝撃を受けた人などによって広く共有された。最初の投稿はもうネット上で見ることはできない。

タス通信によると、落書きには「ユーラ、ここまで来たよ」との文字があり、ソ連の宇宙飛行士ユーリ・ガガーリンに言及したものとみられる。「人間は星まで登っていく前に、地球上で生活することを学ぶ必要がある」との文言も書かれていた。

こうした事態に、ソ連宇宙開発史の一部分が冒瀆(ぼうとく)されたと嘆く声が多く上がったが、今回の出来事をきっかけに機体保存の取り組みが進む可能性もある。

ロスコスモスは、ロシアやカザフスタン当局者との次回会合で機体移動の可能性を提起すると表明。宇宙博物館への移動について迅速に決定を下すことが必要だと述べた。

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