パラ卓球で5大会出場目指す73歳 日本の「マダム・バタフライ」

車いす卓球の別所キミヱ選手/Shiho Fukada for CNN

2021.05.30 Sun posted at 13:15 JST

(CNN) 車いす卓球でパラリンピック5大会連続出場を目指す日本の別所キミヱ選手(73)は、チョウの髪飾りがトレードマーク。「蝶々夫人」「マダム・バタフライ」と呼ばれるが、愛称の繊細なイメージとは裏腹に不屈の精神を持つ。

チョウの髪飾りは数十個持っていて、それぞれ色や大きさが違う。服装やラケットケースもチョウの羽の模様で飾られ、車椅子にはチョウのシール、ネイルもチョウの羽のように輝いている。

別所さんにとって、チョウのアクセサリーは幸せの象徴。球が優しくネットに触れてから素早く相手コートに落ちる得意技のイメージでもある。

今夏の東京パラリンピックは命がけだと、別所さんは言う。五輪出場を目指す数千人の選手たちと同じく、不安を抱えながら訓練に励んでいる。日本が感染の「第4波」に見舞われるなか、ワクチンはまだ接種できていない。まもなくスロベニアでの世界予選に出場する予定だが、ワクチンを打たずに外国へ向かうのは怖いと話す。

別所さんはCNNとのインタビューで、コロナでは死にたくない、死ぬなら競技中にスマッシュで勝ちを決めてからと語る。つまらない死に方はせず、大きなスマッシュを決めると笑った。別所さんによれば、友達が私のひつぎをピンポン球で飾ってくれるそうだ。


兵庫県にある卓球教室で練習する別所さん/Shiho Fukada for CNN

別所さんは広島育ち、8人きょうだいの1人だ。走るのが速くて足が強く昔からバレーボールや陸上、スキーなどのスポーツが得意だった。

だが38歳の時に夫が病死。別所さんは悲しみに打ちひしがれた。ようやく立ち直りかけたころに腰から脚にかけてしびれを感じ始め、ついには歩けなくなった。夫の死から2年後にがんの診断を受け、摘出手術の後にまひが残った。医師からは余命3年と宣告された。


別所さんは若いころはバレーボールや陸上、スキーなどのスポーツが得意だった/Family photo courtesy Kimie Bessho

またスポーツがしたい、バイクに乗りたい。車いすに数分間座っているだけでも苦痛だったが、それでも耐えた。

自立しようと障害者のための自動車教習所に入り、手だけで運転する技術を習った。その近くの体育館でパラスポーツを知り、リハビリのために卓球を始めた。体がまひしてから5年後、45歳の時だった。

別所さんのトレードマークは、チョウの髪飾りだ

56歳でパラリンピック初出場。「体は不自由になったけれど、車いす卓球ができるという大きな贈り物をもらった」と話す。

ところが4回目のパラリンピック出場を果たした後、2018年に2件の交通事故で負傷してしまった。街に出た時に車にひかれ、両手両腕を負傷したのが1件目。2件目はトラックに追突され、7カ月も入院した。

だが別所さんは「この2年間で多くのことを乗り越えられたのだから、今度も乗り越えられる」と力を込める。

日本政府はまもなく出場選手団へのワクチン接種を始める予定。また国際オリンピック委員会(IOC)は、米ファイザー社が各国選手団へのワクチンを無料で提供すると発表している。


パラリンピック5大会連続出場を目指している/Shiho Fukada for CNN

別所さんはすべての物を徹底的に消毒するなど、細心の注意を払って暮らしてきた。新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから毎日、外出先や接触相手と時間を記録し、朝晩体温を測る。突然救急車で運ばれてもいいように、玄関には3日間の衣類を入れたバッグを置いてある。

別所さんは、五輪が開催されるかどうか私には分からないが、どうなろうと、私は今できることをするだけと話す。毎日トレーニングを楽しんでいるし、開催されるかどうか、心配しすぎたらトレーニングができなくなると述べた。

さらに、精神的に強くて闘志があるとして、いくつになっても若い選手に勝てるだろうと胸を張った。

5度目のパラ出場目指す「マダム・バタフライ」

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