米軍、1958年に中国への核使用を検討 沖縄含む米軍基地への報復も想定

金門島の港で砲弾を積む兵士。1958年台湾海峡危機のころ/Hulton Deutsch/Corbis Historical/Getty Images

2021.05.25 Tue posted at 10:54 JST

香港(CNN) 1958年の台湾海峡危機の際、米軍の作戦本部が中国本土に対する核兵器使用計画を準備するよう、ホワイトハウスに提言していたことが、新たにリークされた文書で明らかになった。米軍指導部の一部は、報復として沖縄などの米軍基地が核攻撃される事態も容認する意向だったとされる。

この文書については米紙ニューヨーク・タイムズが22日に報じた。同紙にこの情報を提供したダニエル・エルズバーグ氏は、ベトナム戦争をめぐる米政府の不正を告発した「ペンタゴン・ペーパーズ」を1971年に暴露した内部告発者だった。

エルズバーグ氏は23日、ツイッターへの投稿で「米国による核兵器の先制使用は、台湾の防衛を含めたいかなる状況であっても、検討・準備・威嚇すべきではない」と訴えた。

今回リークされた文書はシンクタンクのランド研究所が58年の台湾海峡危機について66年にまとめた報告書の機密扱いだった部分で、M・H・ハルペリン氏が国防次官補のために執筆していた。

1958年の台湾海峡危機では中国軍が台湾の離島を砲撃し、米中の軍事的衝突が緊迫化していた。米国は、この砲撃が本格的な侵攻の前兆になることを警戒していた。

砲撃を受けた金門島と馬祖島は台湾と中国本土の間にあり、ランド研究所は台北防衛の第一線と形容している。

当時のアイゼンハワー米政権が中国に対する核兵器の使用を検討していた事実は既に公になっていたが、今回の文書では初めて計画の具体的な内容が明らかになった。

米国防総省と国務省は、台湾の離島を失った場合、中国共産党による台湾の完全制圧につながり得ることを危惧していた。砲撃を受けて米空軍幹部は、米軍が中国空軍の基地に対して核兵器を使用すべきだと主張。航空阻止の作戦を成功させないために「低出力の10~15キロトンの核兵器」から始めるべきだと述べ、それでも中国本土からの攻撃を阻止できなかった場合、「中国の北は上海に至るまで深く核攻撃を行う以外、米国に選択肢はない」と主張した。

金門島の国民党の兵士。同島は1958年に中国から砲撃の対象となった

統合参謀本部議長は、そうなれば台湾と沖縄の米軍基地が核で報復されることは「ほぼ確実」だと認めたうえで、「離島を守ることが国家の政策であるならば、その結果は受け入れなければならない」と強調したとされる。

当時の中国はまだ核開発が進んでいなかったことから、核の報復があるとすればソ連からの攻撃が想定され、そうなればさらに壊滅的な国際衝突に発展していた可能性もある。

統合参謀本部としては、核兵器の使用は避けられないとの見方だった。

空軍の太平洋担当最高司令官は、中国による離島攻撃に対する米軍の航空作戦について、「最初から核兵器を使用しない限り、成功の可能性はない」と言い切った。

最終的にはアイゼンハワー大統領が核兵器の使用を思いとどまり、米軍には通常兵器のみを使用させた。

台湾海峡では1958年10月6日に停戦が成立した。しかし中国と台湾の緊張状態は今も続いている。

今、再び軍事的緊張が高まる中で、エルズバーグ氏はニューヨーク・タイムズ紙のインタビューの中で、台湾をめぐる新たな戦争の可能性を憂慮して今回の文書を提供したと語っている。

同氏は23日のツイートで双方に自制を促し、「この秘密の歴史を教訓として、狂気を繰り返してはならない」とジョー・バイデン米大統領に呼びかけた。

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