(CNN) 米国の研究チームが人工授精を通じてサメの赤ちゃん97匹を誕生させることに成功し、このほど科学誌サイエンティフィック・リポーツに論文を発表した。「過去最大規模のサメの人工授精の取り組み」と位置付けている。
今年に入って科学誌ネイチャーに発表された論文によると、海洋のサメは31種のうち16種が絶滅危惧種に分類されている。世界のサメやエイの数は1970~2018年にかけて71%減った。
サメの人工授精は種の繁殖と保全を目指す非営利組織の研究チームが、米国内の水族館や博物館と協力して実施。オスのテンジクザメ19匹の精子を採集して、メス20匹に人工授精した。この研究には4年を要した。
テンジクザメはインド太平洋に生息する種で、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで準絶滅危惧種に分類されている。体長は約1メートルと小型で、体長1.8~2.4メートルのサメの仲間シロワニに比べると繁殖させやすいという。
さらに、多くの水族館がテンジクザメを飼育していることから、精子の交換が実現した。
1度に人工授精を行ったメスは2~3匹。産卵が確認できるまでにはそれぞれ約6週間観察する必要があり、実験は毎回およそ9カ月を要した。
人工授精は同じ水族館で飼育されているオスとメスの間で行ったり、冷却保存した精子を米国内の別の水族館に輸送して人工授精したりした。
誕生した赤ちゃんザメ97匹のうち16匹は、別々の水族館で飼育されているオスとメスの間の子どもだった。「これで遺伝子を国際的に交換したり、野生のサメから精子を採取して水族館のメスや孤立した野生のメスに受精させることも可能になる」と研究者は説明している。