かじられた跡も、洞窟からネアンデルタール人9人の骨 「並外れた発見」 伊

イタリアのガタリ洞窟でネアンデルタール人やハイエナ、象の骨が見つかった/Italian Ministry of Culture

2021.05.14 Fri posted at 06:31 JST

(CNN) イタリアのリゾート地、サンフェリーチェチルチェーオ付近のガタリ洞窟でネアンデルタール人9人やハイエナの群れ、象数頭の骨が見つかり、考古学者を驚かせている。骨の多くにはハイエナにかじられたとみられる跡があった。

イタリアのダリオ・フランチェスキーニ文化相は声明で、「並外れた発見だ」と説明。「世界中で話題になるだろう」と述べた。

イタリア文化省の声明によると、ネアンデルタール人9人のうち1人の骨は9万~10万年前のもの、他の8人の骨は5万~6万年前のものだという。いずれも男性で、1人だけ他よりも年齢が若かったとみられている。

この洞窟は1930年代に偶然発見された。考古学者らは、古代の地震か後の時代の地滑りで立ち入り不能になった区域に到達しようと調査を開始。39年にはネアンデルタール人のものと考えられる保存状態の良い頭がい骨が発見されるなど、他にも2つの頭がい骨が見つかっていた。

文化省は声明で「過去に発見された他の2つの頭がい骨と合わせ、ガタリ洞窟で見つかったネアンデルタール人は計11人になる。この洞窟がネアンデルタール人の歴史にとって世界有数の重要性を持つ場所であることが確認された」と述べた。

文化省によると、洞窟の天井で通気口が発見されたことから、一部の人類学者はネアンデルタール人が人肉食の儀式を行っていたと考えている。見つかった骨の一部は焼かれた状態だった。

洞窟のより奥深くからは切れ込みの入った骨も出土した。

洞窟で発見されたネアンデルタール人の骨

今回発見された骨には胴体から分離した頭がい骨、歯2本、脊椎(せきつい)が含まれる。このほかゾウやサイ、巨大な鹿、馬、絶滅した牛のような動物オーロックスのものとされる骨も数百個見つかった。

文化省は声明で「骨の多くにはかじられた跡がはっきりと見えた。ハイエナの可能性が高い」との見方を示したものの、ハイエナに殺されたのか、死後に食べられたのかは不明だと説明した。考古学者の見方では、ハイエナたちは持ち帰った獲物を保管して食べる場所として洞窟を使っていた可能性があるという。

ネアンデルタール人は4万年あまり前に絶滅したが、家庭用DNA検査キットの出現で一部の人にネアンデルタール人のDNAを検出できるようになったことを受け、最近になってネアンデルタール人の歴史への関心が高まっている。

サンフェリーチェチルチェーオ地域は今や、古代人類の研究で最も重要な地域のひとつ。人間と動物の両方の歴史についての手がかりを含む一種のタイムカプセルになりそうだ。

プロジェクトを率いる考古学者のフランチェスコ・ディマリオ氏は文化省の動画で、今後は古代人類社会への知見を深める目的で骨の調査に着手すると述べた。洞窟の堆積(たいせき)物についても調査を行い、ネアンデルタール人絶滅の要因となったとみられている古代の気候変動の解明を目指す考えだ。

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