バイデン氏が初の施政方針演説、5つのポイント

初の施政方針演説を行うバイデン米大統領/Chip Somodevilla/Getty Images

2021.04.29 Thu posted at 19:00 JST

(CNN) バイデン米大統領は28日、米連邦議会の上下両院合同会議で初の施政方針演説を行い、政府が進める大規模なプログラムについて力強く支持を訴えた。

通常より遅い就任100日を目前にした演説は、新型コロナウイルスの流行や経済危機を色濃く反映するものとなった。

バイデン氏は政府の取り組みは新型コロナや雇用にとどまるものでなく、米国の民主主義が生き残るかを左右するものだと熱弁。数兆ドルに及ぶ財政支出は米国の存在をかけた課題になると議員に訴えた。

長年待ち続けた「議長閣下、米国大統領です」の呼び声で議場に入ったバイデン氏の演説を、5つのポイントにまとめた。

待望の大統領職、迅速に施策を進めたい思い

40年以上議場や副大統領の席から他の大統領が紹介されるのを見てきたバイデン氏は、長年の忍耐を経て主役となった。議場の演壇に立ち「戻ってこられてよかった」と述べた。

だが、バイデン氏はもう待つ必要はない。演説では自身の掲げる政策課題をいち早く進めたい姿勢が前面に出た。1兆9000億ドルに及ぶ経済対策を共和党の支持抜きで議会を通したことにも何ら謝罪の言葉はなかった。緊急に必要だったと述べ、次の諸法案も国の差し迫った結果がかかっているとして、早急に取り上げるように議員に訴えた。

バイデン氏は「米国は前進している。それを止めることはできない」「我々は歴史の転換点にいる。ただ復興するだけでなく、よりよく復興しなければならない」と語った。

共和党議員と協力したい考えも示し「異なる考えを持つ人々とも会いたい」と発言。ただ「世界は待ってくれない。私の考えでは、何もしないという選択肢はないということは明確にしておきたい」とも語った。

バイデン氏やその顧問らは主要課題の実現にあまり時間がないことを認識している。夏にかけては移民の増加、警察活動に関する社会不安、ガソリン価格高騰など、支持率を下げうる要因が待っている。さらに議員が次の選挙に向けた動きを本格化させる時期が目前に迫り、共和党議員の協力は得にくくなる。歴史的に1期目の大統領の中間選挙は大統領に優しくない。

警官に首を圧迫されて死亡したジョージ・フロイドさんの名を冠した警察改革法案も、死去から1年となる来月までに議会を通過させるようにバイデン氏は呼びかけた。重要な時が過ぎゆくのを待つつもりがない点を明確に示した。

まばらな議場は新型コロナの影響を象徴する風景となった

大きな政府がよりよい政府だと主張

バイデン氏の演説を生き生きとさせたのは、大きな政府がうまく機能すれば、米国民の生活をよりよくできるとの主張だ。これは民主、共和の党派を超えて数十年間志向していたより小さな、干渉をしない政府の考えと真逆となる。

バイデン氏は「我々は民主主義がまだ機能することを証明しなければならない」と述べ、ワクチンキャンペーンや雇用創出の取り組みに触れた。ワクチンの開発といった科学への投資にも言及し、「こうした投資は我々が協力して行うものだ」と述べた。

こうした発言は1996年に民主党のクリントン大統領が施政方針演説で語った「大きな政府の時代は終わった」の言葉と正反対のように聞こえる。

バイデン氏は28日に発表した教育や育児、有給の家族休暇を強化する1兆8000億ドル規模の計画も含め、6兆ドル近い財政支出の実行を追求。解決の難しい問題を政府が対処していこうと大きな賭けに出る。

バイデン氏は新型コロナ流行やそれに伴う経済危機を味方に付けてきた。こうした危機は政府の役割に対する国民の見方を変えてきた。さらに気候変動や刑事司法改革など、長期的な課題に対する見方の変化も追い風となっている。こうした課題は結果を出すのに、より政府の介入を必要とする。

NBCニュースが実施した世論調査でも、政府が「問題解決のためにもっと行動すべきだ」と答えた人が全体の55%で、やり過ぎだと答えた41%を上回った。

ファーストレディーのジル夫人も見守った

無視できない新型コロナ

新型コロナ流行が演説の主要な部分を占めたのは不思議ではない。バイデン氏が今直面している最大の単一の課題であり、政権の命運を握る課題と側近も認識している。

だが、28日の演説はその話をしなくても、一目見れば危機が続いていることがわかった。所狭しと議員が座っている風景はなく、ファーストレディーのボックスにはゲストがいなかった。バイデン氏の後ろに座る副大統領と議長はマスクを着けていた。議場での拍手も小さな劇場で社交辞令的に叩いているように聞こえた。

バイデン氏は新型コロナ流行の今後については楽観的な見方を示した。「史上最悪級の流行に対してこの100日間で成し遂げた進展は、米国史上最もすばらしい調達の実現の一つとなった」と政権の対応を自賛した。

ただ、ワクチン接種に後ろ向きな市民に対する懸念も隠さなかった。ワクチン接種を十分な人数が受けなかった場合、社会全体での免疫達成ができないという最悪のシナリオを政権の保健当局者は恐れている。

バイデン氏は「ワクチンを受けに行ってほしい」と国民に呼びかけた。

マダム・スピーカー(議長閣下)、マダム・バイス・プレジデント(副大統領閣下)と呼びかけるバイデン氏

象徴的な出来事

大統領の施政方針演説は1年間で最も見られるテレビ演説だが、今回は象徴的な出来事が目に見える形で印象に残った。

新型コロナの影響で議場の様子が大きく変わったほか、副大統領と下院議長の席に座ったのが2人とも女性だった点は歴史的だった。

バイデン氏は演説の冒頭、「マダム・スピーカー(議長閣下)。マダム・バイスプレジデント(副大統領閣下)。今までだれもこうした言葉をこの演壇から発することはなかった。今がそのときだ」と語った。

また演説の場となった下院議場は、今年1月6日の暴徒乱入事件を思い起こさせた。

バイデン氏は「我々は今日ここに集まっているが、議事堂を襲った暴徒の映像がまだ鮮明に心の中に残っている。生命が危機にさらされ、失われた」「反乱は我々の民主主義が生き残れるかの試練であり、存在をかけた危機だった。そして民主主義は生き残った」と語った。

演説するバイデン氏に拍手を送るハリス副大統領(左)とペロシ下院議長

世界に訴える

バイデン政権の最初の焦点は米国民だった。

だが、そうした国内向けの取り組みは世界に対するアピールであることもバイデン氏は演説で隠さなかった。米国の衰退という考え方は誤っているというアピールであり、特に中国に向けられていた。

バイデン氏は原稿になかった習近平(シーチンピン)国家主席の名前を3度も呼び、「彼は世界で一番重大で重要な国になろうと真剣だ」と語った。

バイデン氏は自身の全体的な政権課題を民主主義と独裁主義の闘いと位置付ける。大半の法案を通過させることで、民主主義の方が勝利を収めるということを世界に示せると考えている。

「独裁者たちに未来はない。米国が未来を勝ち取る」とバイデン氏は演説を締めくくった。

外交方針は施政方針演説で主要なトピックとならないのが通常だ。ホワイトハウスのサキ報道官も「これまでも外交チームが望むほど外交政策に触れるものではなかった」と述べていた。

それでもバイデン氏はこれをより存在感のある形で演説に盛り込んだ。

「世界の40以上の首脳と会話をしてきたが、私は米国が戻ってきたと伝えてきた。彼らが何と言っているか知っているか。彼らは『米国は戻ってきたが、どのくらいいるんだ』と聞いてくる」「米国民の皆さん。我々は戻ってきただけでなく、戻って(ここに)居続けるということを示さなければならない」とバイデン氏は語りかけた。

バイデン氏が初の施政方針演説

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