香港の調査報道ジャーナリストに有罪判決、報道の自由にさらなる打撃

報道番組制作の過程でデータベースを不正利用したとの罪に問われたバオ・チョイさん/Kin Cheung/AP

2021.04.23 Fri posted at 13:45 JST

香港(CNN Business) 香港の民主派が2019年に暴徒に襲撃された事件の調査報道をめぐり、西九龍治安判事裁判所は22日、データベース不正利用の罪に問われたフリーランスジャーナリスト、バオ・チョイさんに有罪判決を言い渡した。香港の報道の自由に対するさらなる打撃と受け止められている。

チョイさんは公共放送、香港電台(RTHK)のドキュメンタリー番組制作の過程で車両登録データベースを検索したとして、道路交通条例違反の罪に問われ、6000香港ドル(約8万3000円)の罰金を言い渡された。

検察側は、同データベースは交通関連の案件にのみ使用されるべきもので、報道目的では使用できないと主張していた。

アイビー・チュイ治安判事はこの主張を認め、チョイさんによるデータベースの使用は、運輸局に自分の情報を提供した車両の持ち主が想定していた使い方ではなかったと判断。許容された範囲内でこの情報を使用しないユーザーに、車両の持ち主の個人情報を提供すべきではないと述べ、「報道や取材は交通や運輸に関係していない」「申請者が運輸局の情報を報道目的で使用したのは明らか」とした。

チョイさんの裁判は、香港当局が民主化運動に関係した人物の摘発を続ける中で行われ、人権問題をめぐる懸念は一層強まっていた。

2019年7月に香港北部の元朗駅で起きた事件では、民主化支持者や通勤客が、犯罪組織と思われる集団に襲撃された。警察が対応するまでに39分かかったことから民主派が批判を強め、民主派と当局の信頼関係悪化につながった。

香港ではジャーナリズムに対する規制が強まっている

チョイさんが制作したドキュメンタリーは2020年7月にRTHKで放送された。番組の中でナレーターは、襲撃犯に武器を提供した疑いのある車両数台を、制作陣が突き止めたと説明。車両登録データベースを使ってこの地域に住む村の代表者を割り出し、コメントを求めたことを明らかにした。

チョイさんのドキュメンタリー番組は、香港で2つの賞を受賞した。

先月の公判でチョイさんの弁護側は問題の車両について、7月21日に襲撃犯のための武器を運ぶ目的で使われた疑いがあることから、「明らかに交通問題に関係している」と主張。公共データベースは公共の利益のために公開を続けるべきだと訴えた。

チョイさんに対する判決は、香港でジャーナリズムに対する規制が強まっている実態を見せつけた。判決言い渡しを受けてチョイさんの支持者は「ジャーナリズムは犯罪ではない」と訴えている。

国境なき記者団がまとめた報道の自由ランキングで、香港は180カ国・地域中の80位に下落している。2002年のランキングでは18位だった。

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