銃とテーザー、どの程度混同しやすい(しにくい)のか

テーザーの指導者資格を得るために訓練する法執行当局者=2014年8月29日、テネシー州ガトリンバーグ/Curt Habraken/The Mountain Press/AP

2021.04.15 Thu posted at 07:50 JST

(CNN) 警官はテーザー(スタンガンの一種)を使用するつもりなのに、代わりに拳銃を発砲して人を殺してしまう――。一見したところ、こんな取り違えは不可解に見える。

だが、これこそ米ミネソタ州ブルックリンセンターで11日に起きた事態のようだ。地元警察署長によると、女性警官は「テーザー」と三度叫んだ後、自らの銃の引き金を引き、ダンテ・ライトさん(20)を射殺した。

ボディーカメラの映像からは、ライトさんが致命傷を負った直後、警官がショックを受けている様子がうかがえる。

警官は「なんてこと」「彼を撃ってしまった」と叫んでいる。

この種の悲惨な事件は以前にもあった。

2015年には、ボランティアで保安官代理を務めていたロバート・ベイツ氏が誤ってテーザーの代わりに拳銃を発砲、非武装だったエリック・ハリス容疑者を殺害した。ハリス容疑者はこのとき既に、複数の保安官代理によって地面に組み伏せられていた。

オクラホマ州タルサで起きたこの事件を捉えた動画には、ベイツ氏が「彼を撃ってしまった。すまない」と言う様子が映っている。ベイツ被告は第2級故殺罪で有罪となり、禁錮4年を言い渡された。

またカリフォルニア州オークランドでは09年、ベイエリア高速鉄道警察の警官、ヨハネス・メサリー氏がテーザーの代わりに銃を発砲し、オスカー・グラントさん(当時22)を殺害する事件もあった。メサリー氏は過失致死罪で禁錮2年を言い渡されたものの、刑務所内での態度の良さを理由に早期釈放された。

ミネソタ州の警官の処遇がどうなるのかは不明だ。ブルックリンセンター警察のティム・ガノン署長によると、「ライト氏の悲惨な死につながった不慮の発砲」を受け、この警官は休職処分になっている。

誤ってテーザーの代わりに拳銃を取り出し発砲する事態はどれほど起きやすい(起きにくい)のだろうか。以下でいくつかの要素を検討する。

ダンテ・ライトさんを撃ったキム・ポッター警官

位置が重要

法執行に詳しい専門家は、銃は利き手側のホルスターに入れ、テーザーは非利き手側に装着すべきだと指摘する。

従って、警官が右利きの場合には銃は右側、テーザーは左側に装着する必要がある。

CNNの法執行アナリスト、チャールズ・ラムジー氏は12日、「テーザーを拳銃の反対側に携帯するのは、ミネソタ州の銃撃事件のような事態が起きるのを避けるためだ」と指摘した。

ブルックリンセンター警察はこの方法に従うよう訓練を受けているという。

ライトさんを殺した警官が銃やテーザーを誤った側に装着していたか、あるいは逆の手でそれをつかんでいたかどうかは現時点では不明だ。

テーザーは銃と識別できる設計になっている

テーザーには外見や感触を銃と異なるものにする重要な相違点が複数ある。

販売会社テーザーのスティーブ・タトル元副社長が2015年に語ったところによると、通常はテーザーの方が軽く、グリップや感触にも違いがある。

またテーザーは安全装置を外すと、LEDの制御パネルが点灯する。

ホルスターも銃とは違うほか、多くのテーザーは少なくとも一部に明るい黄色が使われている。

「起きてはならなかった」

ミネソタ州の事件をめぐり独立した捜査員が調べを進め、警官に対する訴追の是非を検討する中、ガノン署長はライトさんの家族に「心からの哀悼の意」を示した。

「ライトさんの遺族や友人の痛みや喪失感を和らげるために、私に言えることはない」「その痛みは地域社会や事件にかかわる全ての人が共有している」(ガノン署長)

ラムジー氏によると、ボディーカメラの映像からは致死性の武器を使用する必要性はうかがえない。テーザーと銃の取り違えが死につながることは非常にまれだが、こんな事件は1件でも多すぎる。

「間違いなく悲劇だ」「こんなことは起きてはならなかった」とラムジー氏は話している。

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