(CNN) 英製薬大手アストラゼネカが23日、新型コロナウイルスワクチンの臨床試験(治験)で平均70%の有効性が認められたと発表した時、世界は安堵(あんど)のため息をつき、株式相場も上昇した。
しかし、ここにきて治験データの一部側面について透明性の不足が指摘され、科学界では懸念の声も上がっている。欧米で同社のワクチンの認可が遅れる可能性もある。
アストラゼネカの23日の発表によると、英国で行われた治験の参加者は2つの異なる投与方法を受けた。
同社はこの時の発表では、2つの異なる投与方法を使った理由や、一方のグループの規模が他方よりも大幅に小さい理由を説明していなかった。
一方のグループでは、参加者2471人が最初に通常の半分の量、1カ月以上後に全量のワクチンを投与された。このグループでの予防効果は90%だった。
2つ目のグループでは、参加者8895人が最初に全量、1カ月以上後に再び全量のワクチンを投与された。こちらのグループでの予防効果は62%にとどまった。
アストラゼネカはこれをもって平均70%の有効性がワクチンに確認されたとしている。
しかし、2つの異なる治験の結果をプールして発表するのは標準的な報告方法から逸脱しているため、一部の研究者からは、アストラゼネカがこうした方法を取った理由に疑問を呈する声が出ている。
発表から数日が経過し、これ以外にも混乱を生む点が出てきた。
アストラゼネカの幹部は24日、まずロイター通信に対し、90%の有効性が確認されたグループのワクチン投与量が少なかった理由について、研究室での誤りが原因だと説明。「半分の投与量になったのは偶然」だと述べた。
続けて25日、アストラゼネカとワクチンの共同開発に当たる英オックスフォード大はCNNに対し、「新しいワクチンの投与方法の選択は複雑であり、我々は複数の手法を模索する中で、想定より少ない量を投与したことを発見した」と述べた。
オックスフォード大は26日には一段と踏み込み、CNNに寄せた声明で「製造過程の違い」が誤りにつながったと説明した。
この製造上の問題は後に修正され、治験を監督した英規制当局は「両方のアプローチ」を第3相試験に組み込むことに同意したとしている。
アストラゼネカとオックスフォード大は23日の声明や会見ではこの誤りに言及しておらず、両組織に対して透明性に関する批判が出ている。ただ、アストラゼネカは、治験結果が前向きだったことに焦点を当てるべきだとの見方を示している。