日本のスポーツ界で横行する指導者の暴力や虐待、子どもの被害実態を人権団体が告発

国際人権団体が、日本のスポーツ界における子どもへの虐待に関する報告書を発表した/TORU YAMANAKA/AFP/AFP via Getty Images

2020.07.21 Tue posted at 15:03 JST

(CNN) バットや棒で殴られたり、顔面を平手打ちされたり、水中で頭を押さえつけられて窒息しそうになったり――。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は20日、日本でスポーツをする子どもが指導者から受けた虐待の実態について告発する報告書を発表した。

報告書は、少なくとも16競技の現役選手や引退した選手56人のインタビューと、757人を対象にインターネットで実施した調査をもとにまとめられた。

調査は24歳以下の選手や元選手を対象に今年3月~6月にかけて実施。スポーツに関連して身体的な虐待を直接的に経験したという回答は、半数を超えていた。

「日本では、子どもがスポーツのなかで暴力等の虐待を経験することがあまりにも多い。その結果、あまりに多くの子どもにとって、スポーツが痛みや恐怖、苦痛をもたらす経験となってしまっている」。報告書は冒頭でそう指摘している。

「数えきれないほど叩かれて」という報告書のタイトルは、23歳の野球選手の言葉から引用した。この男性は、中学の時に野球部の監督からみんなの前で殴られて、鼻血が出たという体験を語っていた。

別のプロバスケットボールの元選手は、2000年代半ばから後半にかけての高校時代にチームメートが毎日殴られていたと振り返り、「髪の毛引っ張られたり、蹴られたりもした。......(顔)が殴られすぎて青くなって。......血が出たことも」と証言した。

今回の報告書は、来年に延期になった東京オリンピックが開幕する予定だった週に合わせて発表された。

スポーツ法の専門家、山崎卓也弁護士は報告書の中で、「虐待事案の対処がこれほど難しい理由の一つは、選手が声を上げることが奨励されていないからだ」と解説する。「ややこしいのは、ほとんどの中央競技団体が元選手やスポーツ業界人の手で運営されていること。こうした人たちは、有力な指導者に物を申すことを本当に躊躇(ちゅうちょ)している」

報告書の発表は、来年へ延期になった東京五輪が開幕する予定だった週と重なった

HRWは、指導者が子どもに対して振るうあらゆる形態の虐待禁止を含め、日本のスポーツ指導の在り方を改革すべきだと訴える。

2013~19年にはスポーツ界の暴力を防ぐことを目的とした改革も行われたが、こうした取り組みでは子どものスポーツ選手の問題に適切に対応できず、法的な拘束力もなかったことから、実効性に疑問が生じ、失敗に終わったと報告書は指摘する。

さらに、「子どもを守るために断固とした行動を取ることは、日本の子どもたちに対して、自分たちの健康や幸福が大切だというメッセージを送ることになり、虐待を行っている指導者に対し、そうした行動はもはや許容されないと告げることにもなる」と言い添えた。

日本のスポーツ団体はこれまでのところ、今回の報告書についてコメントを発表していない。

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