豪州、潮力発電の可能性探る エネルギーミックスの切り札になるか

潮の流れを再生可能エネルギーとして活用する取り組みが豪州で進んでいる/mako energy

2020.09.12 Sat posted at 12:45 JST

シドニー(CNN Business) オーストラリアといえばビーチやサーフィンで有名だが、海はサーファーの楽園であるだけではない。海がもたらす潮の流れは、再生可能エネルギーの源でもあるのだ。

今、オーストラリアの多くの企業が、潮流の可能性を生かしたビジネスを展開している。シドニーに拠点を置くマコエナジーもその1社だ。同社は、直径2~4メートルの水中タービンを製造している。流水の中で作動するタービン1基で最大20世帯の消費電力をまかなうのに十分な発電が可能だ。

マコエナジーのタービンは、流れの遅い水の中でも発電できる設計になっており、海だけでなく川や灌漑(かんがい)用水路でも使用可能だ。

では、この潮力発電は火力発電の代替手段となりうるか。

潮力エネルギーは、まだ生まれて間もないエネルギーだが、今後オーストラリアの化石燃料への依存度を下げるのに役立つ可能性がある。

オーストラリアの環境・エネルギー省によると、2018会計年度(2017年7月~18年6月)の同国の一次エネルギー消費量に占める再生可能エネルギーの割合はわずか6%で、さらに同会計年度の年間発電量に占める再生可能エネルギーの割合も17%だった。これは、同国に安くて豊富な石炭資源があることが一因だ。

しかし、オーストラリアにおける再生可能エネルギーの導入量は増加しており、同会計年度に風力発電は20%、太陽光発電は23%それぞれ増加した。

潮力発電については、まだいくつかの試験計画を通じて検討を開始したばかりだが、潮力発電には他の再生エネルギーにはない大きな利点がある。それは予測可能性だ。太陽は雲に隠れてしまうこともあるし、風は吹かないこともあるが、海は予測可能な潮流で動く。

マコエナジーが製造する水中タービン

低コスト化で潮力発電の利用促進

大規模な潮力エネルギーシステムの導入には莫大な費用がかかる。2011年に完成した世界最大の潮力発電所、韓国の始華湖(シファホ)潮力発電所の建設費用は約3億ドル(約323億円)だった。

マコエナジーのタービンも、発電量や設置場所にもよるが、2万~7万ドル(約215万~755万円)の設置費用がかかる。

これまで、マコエナジーの主な顧客は大企業や政府だったが、同社は規模の大小を問わず、多くのエネルギー企業がタービンを利用できるようにしたいと考えている。

導入コストが下がれば、グリーン(環境にやさしい)エネルギーの導入を検討している石炭火力発電所やオフグリッドの(送電網を利用しない)沿岸地域など、誰でもタービンを利用可能になる。

潮力エネルギーの可能性は海と同じくらい広大に見えるかもしれないが、克服すべき課題も多い。欧州連合(EU)は2017年に発表した報告書の中で、潮力発電所の導入が海洋生物に与える影響に関する研究が不十分と指摘している。また別の報告書では、高い建設費用が潮力発電の世界的展開の障害となるとの懸念を示している。

現在オーストラリア政府は、さまざまな海洋エネルギープロジェクトに投資を行っている。この取り組みを通じ、政策立案者たちは潮力や波力が国のエネルギーミックス(多様なエネルギー源を組み合わせて電気の安定供給を図る)にいかに寄与するかについて理解を深められるとしている。

豪エネルギー業界、潮力発電に注目

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