室内にカメラ設置で自宅待機を監視、「プライバシー侵害」の声 中国

中国では新型コロナで自宅隔離をする住民宅にカメラが設置されるケースが増えている/Lina Ali

2020.04.30 Thu posted at 10:02 JST

(CNN Business) アイルランド出身のイアン・ラヒフェさん(34)が北京に戻るとアパートの扉の外に監視カメラが設置されているのに気が付いた。レンズはぴたりとラヒフェさんに向いていた。

ラヒフェさんは中国南部からの旅行を終えると家族と共に2週間にわたる自宅での隔離に入った。中国政府は新型コロナウイルスの感染抑止に向けて自宅待機を義務付けている。

ラヒフェさんによれば、扉を開けたらカメラが設置されていた。予告もなかった。ラヒフェさんは、カメラの設置はプライバシーの侵害だと憤る。

CNNが中国に滞在する外国人やSNSへの投稿、政府の声明などを確認したところによれば、正式な通達はないものの自宅待機している人たちの自宅の外に監視カメラを設置する動きは中国の一部の都市で実施されている。

中国には現在、監視カメラの利用を規制する全国的な特定の法律は存在しないが、監視カメラはすでに人々の生活の一部となっている。

中国中央テレビ(CCTV)によれば、2017年時点で中国全土に2000万台を超える監視カメラが設置されていた。一方、IHSマークイット・テクノロジーの報告書によれば、2018年時点で中国に3億4900万台の監視カメラが設置されていた。これは米国の5倍の数だ。英国の調査会社コンパリテックによれば、1000人当たりの監視カメラの設置数で算出した世界の上位10都市のうち8カ所を中国の都市が占めるという。

新型コロナウイルスの感染拡大によって、監視カメラはさらに人々の私生活に近づいているようだ。

中国ではすでに、人々の移動や隔離をコントロールするための電子式の「健康コード」の利用が始まっている。地方当局は自宅待機を強化するため科学技術を活用しており、監視カメラの利用に動いている。

南京市では自宅待機をしている人たちを24時間監視するためドアの外にカメラを設置した。人件費の削減や作業の効率化につながるとしている。遷安市や杭州市でも自宅隔離の監視にカメラを利用している。 中国のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」でも、一部の利用者が新しく家の外に監視カメラが設置されたと投稿している。

公務員のウィリアム・ジョウさんは2月、故郷から常州市に戻った。翌日、警官や作業員が来て表の扉に向けて監視カメラを設置していった。しかも、自宅のキャビネットの内側に。

ジョウさんは怒って、家の外に設置できないのはなぜかと問い詰めた。警官は壊される恐れがあると答えたという。強い抗議をしたものの、結局、カメラはキャビネットに設置されることになった。


故郷から常州市に戻ったジョウさんは、自宅内にカメラが設置されたという/William Zhou

ジョウさんは「(カメラは)私にとって精神的に大きな打撃だ。会話が偶然記録されないよう、電話しないようにしている。寝室の扉を閉めて眠ろうとしても心配でたまらない」「自宅の内側にカメラを設置するのはプライバシーの侵害だ」と述べた。

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