(CNN) 野生の個体は40年近く前に絶滅したとされ、飼育下でしか生息していなかったグアム島固有の鳥「グアムクイナ」が、オーストラリアと日本の間の太平洋上にある小さな島で繁殖しつつある。
絶滅の恐れがある野生生物を記載した国際自然保護連合(IUCN)の2019年のレッドリストで、グアムクイナはそれまでの「野生絶滅」から、「絶滅危惧IA類」に格上げされた
こうした形で過去に絶滅の瀬戸際から復活した鳥類は、カリフォルニアコンドルの1種のみだった。
グアム島は第2次世界大戦中、旧日本軍に占領され、1944年に米軍によって解放された。だがその後間もなく、米国の貨物船に紛れ込んでいたと思われる外来種のヘビ、ミナミオオガシラが出没するようになる。
ミナミオオガシラはグアムの在来動物を餌にして瞬く間に猛繁殖。森林に生息する固有種の鳥12種のうち10種が、このヘビのために絶滅した。
21年にわたってグアムクイナの保護に取り組んでいるグアム農務省の専門家、スザンヌ・メディナ氏によると、鳥類の死滅は連鎖反応を引き起こした。種を運んでくれる鳥がいなくなったことから森林はやせ細り、鳥の餌となっていたクモは激増した。
ヘビが送電線を伝って起きる停電も頻発するようになった。
生き残ったグアムクイナは数えるほどしかいなかった。1981年、保護団体は当時発見できた21羽を全て捕獲して飼育下に置き、グアムクイナは野生絶滅が宣言された。
それから8年後、保護団体は、飼育していたグアムクイナを野生に放つ取り組みに着手した。ただし放鳥したのは、ヘビの餌になる恐れがあるグアム島ではなく、およそ50キロ北東にあるヘビのいない島、ロタ島だった。
しかし最初に放した鳥たちは、車にひかれたり野ネコの餌になったりして、初期の取り組みは失敗に終わった。島内で分散した鳥たちが繁殖の相手を見つけられない傾向があることも分かった。
メディナ氏たちのチームは1990年代後半になって初めて、「飼育下で繁殖する秘密」を発見する。グアムクイナの繁殖行動について注意深く観察を続け、それぞれの性格を把握して調整を行った。
その結果、孵化(ふか)するヒナの数を増やすことに成功し、ロタ島のグアムクイナの数は200羽にまで増えた。グアム島の南端沖にあるココス島でも2010年から放鳥が始まり、現在は60~80羽が生息している。
「この個体数は維持できると確信している」とメディナ氏の同僚、ローラ・ドゥエナス氏は胸を張る。
IUCNの2019年版レッドリストでは、グアムクイナを含む鳥類8種と魚類2種について、状況の改善がみられたとして格上げされた。「生物多様性危機のさ中における、かすかな希望」とIUCNは位置付ける。
それでもレッドリストには、絶滅の危機に瀕している動植物3万種以上が記載されている。
メディナ氏のチームは2年以内にグアム島でも、ヘビがいなくなった地域でグアムクイナの放鳥を予定している。現地では「ココ」と呼ばれるグアムクイナ。「グアムの自然にココが戻る日が待ち遠しい」「自分の息子やグアムの子どもたちみんなに、またココの姿を見せたい」とメディナ氏は期待を膨らませている。