数千人が「飛行機には乗らない」宣言、気候変動に強まる危機感

社会学者のロジャー・タイアーズさんは、飛行機ではなく列車での旅を選んだ/Roger Tyers

2019.12.18 Wed posted at 17:00 JST

(CNN) 英国を出発して24本の列車に乗り、9カ国をまたぐ2万キロの旅を経て、中国にたどり着いた男性がいる。

社会学者のロジャー・タイアーズさん(37)は学術研究の目的で今年5月、英南部のサザンプトンから列車を乗り継ぎ、1カ月かけて中国東部の港湾都市、寧波にたどり着いた。かかった旅費は2500ドル(約27万円)と、往復航空運賃のほぼ3倍だった。

タイアーズさんは気候変動に対する危機感に駆り立てられて、飛行機ではなく列車での旅を選んだと説明する。きっかけは昨年、世界が壊滅的な地球温暖化を避けるために残された時間は11年に満たないと予告した、国連の専門家の言葉だった。

世界では数千人がタイアーズさんと同じように、気候変動を理由に飛行機は利用しないと宣言している、スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんもその1人。


各国の政府が気候非常事態を宣言し、地球温暖化が人の健康や野生生物の未来に与える壊滅的な影響について警告する中で、飛行機の利用は正当化できないとそうした人たちは主張する。

スウェーデンの活動家メイヤ・ローゼンさんは2018年に「フライトフリー」キャンペーンを立ち上げ、10万人に呼びかけて、1年間、飛行機に乗らないと宣言してもらうことを目標とした。

ネット上の宣言書に署名したのは1万4000人にとどまったものの、ローゼンさんはCNNの取材に対し、このキャンペーンが奏功して気候危機の緊急性について認識を高めることができ、列車での移動を増やしてもらうきっかけになったと振り返る。

スウェーデンでは、列車で移動する写真をソーシャルメディアに投稿する波が広がった。

スウェーデン鉄道が2019年5月に発表した実態調査によると、可能な場合は飛行機ではなく列車での移動を選ぶという回答は37%に上り、2018年初めの20%から大幅に増えている。

一方、スウェーデン国内で10の空港を運営するスウェダビアによると、7月に国内便を利用した乗客の数は前年比で12%減った。

12年前から飛行機を利用しなくなったというローゼンさんは、集団での宣言について、気候変動対策に関して多くの人が感じていた無力感に対応する助けになると指摘。「それまでは個人として行動しても意味がないと思っていたが、今回のキャンペーンは、一緒に行動すれば大きな違いを生み出すことができると認識させた」と話す。

タイアーズさんの計算では、中国への列車の旅に伴う二酸化炭素の排出量は、飛行機で往復した場合に比べて約90%少なかった。

「空の旅がどれほどの汚染を引き起こすか、人を飛行機に乗せて地球を横断するために必要なエネルギーと燃料がどれほどの量になるのかを理解するのは難しい」とタイアーズさんは言う。

欧州委員会によると、乗客1人が旅客機で英ロンドンから米ニューヨークを往復した場合に排出される二酸化炭素の量は、欧州連合(EU)の家庭の暖房を通じて年間に排出される二酸化炭素の1人当たりの平均量に匹敵する。

航空会社290社が加盟する業界団体の国際航空運送協会(IATA)は、2050年までに排出量を2005年の半分に減らすという目標を打ち出している。

一方、列車の場合は電気化を推進してクリーンな電力を使うことで、二酸化炭素の排出量をさらに減らすことができる。

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