大人になってからのいじめにどう対処すべきか

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2019.12.21 Sat posted at 19:00 JST

(CNN) いじめとは何か。スタンフォード大学工学部教授で経営科学が専門のロバート・サットン氏は、人が定期的に、虐げられている、屈辱を受けている、活力を奪われている、軽く見られていると感じる行為と定義する。

サットン氏は、人々にこのような感情を抱かせる行為の例として、個人への侮辱、こばかにしたような冗談、脅迫、公共の場で恥をかかせる行為、無礼な妨害行為、個人の空間への侵入、一方的な個人的接触などを挙げる。

サンフランシスコ郊外にあるフットヒル・カレッジの教授で、コミュニケーションが専門のプレストン・ニー氏は、大人のいじめには以下の5種類があることを割り出した。

具体的な/有形のいじめ

このいじめの加害者は、企業における上司や幹部の立場といった正式な権力や、法的権限、資金管理権といった実体的な権限を利用して他人を威嚇する。

言葉によるいじめ

このいじめは、言葉によって人の名誉を傷つけたり、侮辱する行為で、加害者は、批判的な言動を繰り返したり、敵意を持ってちょっかいを出すことが多い、とニー氏は説明する。また性差別的、人種差別的な発言や、同性愛嫌悪の言葉、脅迫的な言葉を浴びせることもある。

受動攻撃性のいじめ

このいじめは、いじめているように聞こえない可能性もあるが、ニー氏によると、ある意味、最もずるいいじめだという。この種のいじめの加害者は、表面的には親切にふるまうが、それとなく相手を傷つける。

被害者を冷やかす内容の毒のある陰口、冗談、皮肉などがその例だ。受動的いじめの加害者は、相手をじろじろ見つめたり、顔に無礼な表情を浮かべたり、被害者のささいな仕草をまねたりしてからかう。また、被害者を社会生活や職場で孤立させ、不安や懸念を抱かせる。

ネット上のいじめ

ネット上のいじめは今日の非常に大きな問題であり、傷つきやすい若者にとって命に係わる重大な結果を招く恐れがある。成熟し、感情的に安定した大人でさえ、嫌がらせのテキストメッセージ、メール、ソーシャルメディアの犠牲になりかねない。また、いわゆる「なりすまし」もネットいじめの新たな手法であるとニー氏は指摘する。

身体的ないじめ

身体的ないじめは、あたかも殴るかのように拳を振り上げるなど、暴力を振るう「ふり」から、物を投げつける行為、さらに身体的な虐待や性的虐待、家庭内暴力などの暴力行為に至るまで多岐にわたる。

それでは、いじめをどのように切り抜ければいいのだろうか。

大人のいじめの加害者は、育った家庭に問題があるケースが多い。

サットン氏は「(いじめの加害者は)幼少期のしつけに問題があったのは間違いない」とし、さらに次のように続けた。「恐らく、彼らの周りには、他人に無礼な態度で接し、人生で出世するには他人をけ落とし、ぞんざいに扱うべき、と助言した悪い手本が存在したのだろう」

デューク大学の調査によると、大人のいじめの加害者は、問題の多い幼少期を過ごし、彼ら自身が虐待やいじめの被害者であることもあるという。

また彼らには、大人になっても最悪の結末が待っている。彼らは、重病や精神疾患を患ったり、麻薬を乱用したり、重罪で起訴される可能性が非常に高く、また慢性的ないじめを受けていた場合は、社会から孤立し、教育水準も低く、貧困である可能性が高い。

発想を転換する

つまり、いじめの加害者の中には同情すべき人もいるということだろうか。いじめが暴力的、脅迫的でない限り、そう考える人もいるかもしれないが、それは加害者のためではない、とニー氏は言う。実は、それはいじめ対策に役立つ可能性があるのだ。

「いじめの加害者、特にそれがほぼ日常的に接触する人物である場合、その加害者への対処法を学ぶ最も賢い秘訣(ひけつ)のひとつは、その人物の経歴を考慮することだろう」とニー氏は言う。

「加害者がトラウマになるような家庭環境で育ったと知り、一定の共感や理解を示したとしても、それはいじめ行動を許すことでは全くない。しかし、いじめに対する恐怖を和らげる効果はある」(ニー氏)

いじめ加害者への恐怖心がなくなれば、戦うか逃げるかという二者択一の考えもなくなり、より積極的な打開策を見いだせるようになるだろう、とニー氏は言う。

距離を置く

いじめへの対処法は、主にいじめ行動の頻度や深刻度によって決定される。いじめが過剰でも有害でもなく、加害者が職場でたまに会う人や、1年に1度、家族の集まりで顔を合わせる親戚の場合、ニー氏はその人物と距離を置くよう勧める。用事が済んだら、その人の視界に入らないよう、さっさとその場を離れるべきだ。

ジェダイの「マインドトリック」を試みる

映画「スター・ウォーズ」シリーズに登場する正義の守護者ジェダイは「フォース」と呼ばれるエネルギーを使って他人に暗示をかけ、その者を意のままに操る。サットン氏は、このマインドトリックを自分自身といじめの加害者の両方にかけるよう勧める。

例えば、いじめが被害者の安全や暮らしに影響がなければ、現在の状況にユーモアを見出してみるのもいい、とサットン氏は言う。例えば、人前に立つことで緊張するのを克服するために観客が全員裸という状況を想像するような感じだ。

また、いじめの加害者に親切すぎるくらい親切にするのもいいかもしれない。

「時に、(いじめに対する嫌悪や恐怖を)超越して、過剰な親切で加害者を圧倒するのもひとつの手だ」(サットン氏)

また加害者がいじめ行動に出たら、相手の目をじっと見つめるのもいい。

サットン氏は「相手の顔や目を見ないと、その人に対する共感は大幅に低下する」とし、「人は相手と視線を合わさないと意地悪になる可能性が大幅に高まる。そこで、加害者と視線を合わせることが非常に重要になる」と付け加えた。

それでは、常習的で悪質ないじめにはどのように対処すればいいのだろう。

いじめが常習的で、自宅や職場で全く楽しめない場合はどう対処すべきか。その場合は、さらなる奥の手を使うしかない。

うまく逃げる

サットン氏が悪質ないじめを乗り切るための最善策と考えているのは、「逃げられるなら逃げる」だという。職場で自分の机を加害者から離せないか、悪質な隣人との接触を減らせないか検討すべきだ。

被害状況を詳細に記録する

常習的ないじめを受け、これ以上耐えられないと感じた時に被害者が取りうる最も重要な対策は加害者の行動を記録することだ、とニー氏もサットン氏も口をそろえる。職場でいじめを受けている場合は、会社の嫌がらせ防止に関する方針を確認すべきだ。もしかするといじめ被害を報告するためのガイドラインが存在するかもしれない。

自分の机に戻った時に加害者に何をされたか、できれば、言われたことをすべて書き出す。目撃者はいなかったか。通りがかりの人でもいい。彼らの氏名を記録し、できれば彼らが見聞きしたことを記録するよう依頼する。いじめを受けた時間、場所、いじめ行動の原因となった状況なども記す。嫌がらせを受けるたびにこれを行い、証拠を積み上げる。

いざ訴訟を起こす際に役立つ証拠、例えば、メールや音声メッセージはないか。早急にそれらを集め、訴訟の準備ができるまでそれらを保存する正式な方法を構築する。いじめの状況説明に関しては、なるべくその道のプロのような姿勢で臨む。

仲間を見つける

ニー氏は「大半のいじめ加害者、大半の常習的な加害者は複数の人をいじめる」とし、「被害者同士の団結は有効だ。数の力は大きい」と指摘する。

被害者仲間がいじめの記録を手伝ってくれたり、経験を共有したてくれたりするかもしれない。また、会社の経営陣や住宅の管理組合に対して、いじめが実際に行われており、やめさせる必要があると説得してくれるかもしれない。そうなると被害者の立場が強くなり、加害者は弱腰になる、とニー氏は言う。

ニー氏は「大半のいじめ加害者は臆病者」とし、「彼らは自分よりも弱い立場の人間を探していじめる。仮にいじめがばれても逃げきれると考えているからだ。経験上、被害者が強い立場で加害者に対抗すれば、加害者は十中八九すぐにいじめをやめる」

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