大型クルーズ船、1回の周遊に必要な食料は?

世界最大級のクルーズ船。気になる食料や飲料の調達事情は?/SBW-Photo

2019.12.28 Sat posted at 14:04 JST

(CNN) かのナポレオンが語ったとされる言葉に、次のようなものがある。軍隊は、その胃袋で行進する。

現代のクルーズ船とナポレオンが率いたグランダルメ(大陸軍)を比較するのはやや無理があるが、どちらも同じ基本的な問題に直面している。それは、ある場所から次の場所に移動する間、いかにして数千人に食事を提供し続けるかという問題だ。

寄港地近くに住んでいる人にとっては幸いなことに、クルーズ船の乗客は各寄港地に頼って旅をしているわけではない。その点は200年前の兵士たちとも異なる。

それで各船のクォーターマスター(補給担当者)の仕事が楽になるわけではないが、少なくともクルーズに必要不可欠である「水」の問題は解決済みだ。現代のクルーズ船は、必要な真水の大部分を船内で製造できる。この真水の製造は、(船自体の熱や蒸気を使って)海水を蒸留するか、海水を逆浸透膜でろ過し、淡水化することによって行われる。

しかし船上には数十軒のバー、レストラン、店舗がある。各店はあらゆる種類の商品を取りそろえ、さまざまな層の目の肥えた常連客に提供する必要がある。何しろこれらの客たちは、昼夜を問わず大いに食べ、飲むことに余念がないのだ。

乗船中、食料の調達や管理といった業務を実際に目にする機会はほとんどない

ロジスティクス

シーズン中、クルーズ船は決まった旅程に従って運航する傾向にあり、各港に平均で約10時間停泊する。この停泊中に、プロビジョニング(食品・飲料の調達)が規則正しく行われる必要がある。ロジスティクス(食料の調達・保存・管理)は、船上で実際に行われている様子を目にする機会がほとんどない業務の1つだが、乗客に最高の体験を保証するために必要不可欠な要素だ。

そして、クルーズ船が年々大型化しているのに伴い、ロジスティクスも驚くほどの規模に拡大している。

例えば、定員930人の豪華客船バイキング・オリオンのような比較的小さなクルーズ船でも、1日約5000個の卵と4000杯の紅茶を消費する。

また皿洗いや洗濯も必要で、毎日洗う皿は1万枚、毎週洗濯するベッドシーツと枕カバーは合わせて1万4000枚に上る。無論、クルーも身だしなみを整える必要があるため、クルーの制服約900着のアイロン掛けを毎日行う必要がある。

バイキング・オリオンよりもはるかに規模の大きなクルーズ船の場合、どれだけの数になるか想像してみて欲しい。

現在、世界最大のクルーズ船であるシンフォニー・オブ・ザ・シーズを例にとると、ごく一般的な7日間のクルーズの間、約6600人の乗客と2200人のクルーに食事を提供し続けるには、約6万個の卵、4400キロの鶏肉、約9000キロのジャガイモ、そして約320キロのアイスクリームが必要だ。必要な食料のリストはさらに続き、その中には旅行の最初から船に積み込まれる450ケースのシャンパンも含まれる。

豪華な食事はクルーズ体験の重要部分を占める

他の大型クルーズ船も似たようなものだ。

「各船は、積み込みのスケジュールに応じて営業所に発注する。通常は積み込みを行う日の1~2週間前だが、かなり前に発注することもある」と説明するのは、MSCクルーズの食料・飲料調達担当ディレクター、エマニュエル・ラバレロ氏だ。MSCクルーズは、MSCメラビリアやMSCベリッシマ(どちらも乗客定員4500人以上の大型船)などのクルーズ船を運航している。

クルーズ船からの食料の発注は、過去の消費実績や、船上で提供される料理のメニューやサービスの準備に必要な品目のリストに基づいて行われる。

例えば、MSCベリッシマは、地中海で運航する時は、クルーズ前に食料の大半を母港であるイタリア・ジェノバで積み込む。1回のクルーズで積み込む食料と飲料は平均でトラック15台分(そのうち2台には新鮮な野菜・果物が積まれる)だ。

積み込み

「クルーズ中、生鮮食品は各寄港地で調達することがよくある。生鮮食品は保存可能期間が短く、保存温度にも制約があり、慎重に管理・提供を行う必要があるためだ」とラバレロ氏は言う。

「またクルーズの間、ゲストにいつでも完熟で食べ頃の野菜や果物を提供するため、同じ野菜や果物でも熟度の異なる複数の商品を購入するといった方法を取ることもある」(ラバレロ氏)

昨今のクルーズ会社は、食べ物の余剰リスクを避ける取り組みにも力を入れる

積み込み作業は、波止場で6~8時間を要し、作業に携わる関係者は優に100人を超える。船側では、積み荷がクルーズ会社の基準を満たすように、インベントリーコンプライアンス責任者(ICO)、食料・飲料担当ディレクター、プロビジョンマスター、調理師、倉庫管理人は、商品の積み込みや商品の品質・量の確認において、それぞれの役割を果たす。

そして、すべての食料を船に積み込むのと同じくらい重要なのが、関連する廃棄物の管理だ。これは海洋生態系の「虚弱体質」が危機に瀕する中、大きな懸案事項となっており、主要なクルーズ会社はどこも、廃棄物を減らす取り組みを強調するためならどんな労も惜しまない。

世界では現在、人間が消費するために生産された食べ物の約3分の1が廃棄されている。今や豪華なビュッフェ式の食事はクルーズ体験の重要部分を占めており、食べ物の余剰が発生するリスクは高い。

ノルウェージャン・クルーズライン(NCL)のある関係者は、「われわれは、過去の乗客の履歴や稼働率など、多くの要因を基に、食べ物の適切な必要量の特定が可能」と語る。同社が運営するクルーズ船の中には、乗客定員4000人のノルウェージャン・ブリスなど、世界最大級の船もある。

「プロビジョンマスターが、食料・飲料担当ディレクターやわれわれの企業チームと連携し、クルーズごとに適切な供給品を適切な量で調達し、受け取るようにしている」(同関係者)

カーニバル傘下のコスタ・クルーズもハイテク企業ウィノーの協力を得て、2020年までに食品廃棄物の50%削減を公約している。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。