英国と欧州の旅行客、合意なき離脱で「大混乱」も 業界関係者が予想

合意なき離脱で英国と欧州の出入国は大混乱をきたすとの予測が出ている/Oli Scarff/Getty Images

2019.09.16 Mon posted at 18:30 JST

(CNN) 食料品は不足し、医薬品の供給は滞り、市民の暴動が起き、道路は封鎖され、燃料は底を突いて、出入国審査には遅れが出る――。

英政府が11日に公表した文書によれば、欧州連合(EU)から合意なしで離脱した場合、そうした事態も予想される。世界中から英国を訪れる旅行者は、その混乱のさ中に飛び込むことになるかもしれない。

英国は10月31日午後11時、EUを離脱する。

消費者団体のWhich?がこのほど実施した世論調査では、英国の旅行者の3分の1が、欧州行きの便の混乱を懸念していると答えた。しかし英国への渡航を予定している人は、さらに差し迫った不安にさらされる。

今回公表した文書について、英政府は「理論的に最悪の」シナリオを想定したものだと説明している。しかし業界の専門家はCNNの取材に対し、旅行に関しては「驚くほど楽観的」な見通ししか示していないと指摘した。もしも合意なき離脱が現実になれば、英国と欧州の国境では何日間も続く行列ができるかもしれないと専門家は予想する。

混乱を見越して英国への渡航予定を変更したり、検討し直すという人も相次いでいる。欧州ツアーを主催する旅行業者の業界団体ETOAのトム・ジェンキンズ代表によれば、暴動や食料不足については旅行者がそれほど心配する必要はないかもしれないが、英国とEU諸国の国境通過については深刻な事態も懸念される。

合意なき離脱の公算は小さいと見るジェンキンズ氏だが、もしも現実になった場合、英国からEUの26カ国に入国する英国民は、他国からの渡航者と同様に「第三国の国民」として扱われる。

英国民がEU市民として優先的に入国することはできなくなり、他国からの入国者と同じレーンに並んで入国審査を受けなければならない。英国から欧州を訪れる旅行者の量だけを考えても、そうした全ての手続きに支障が出る可能性もある。

英仏海峡に面した港湾都市ドーバーを通行するトラックの車列

他国からの旅行者もこの混乱に巻き込まれるとジェンキンズ氏は予想、「最悪のシナリオとして、24時間の遅れが最初の24時間で生じる」と述べ、そこからさらに「何日間も」待たされることもあり得るとの見通しを示した。

ただし誰もがそれほど不安に思っているわけではない。高額旅行を手がけるブラック・トマトの共同創業者トム・マーチャント氏は、「海外の顧客がそれまで予約を手控えていた高額旅行を、買い得と見なして予約するようになっている」と話す。

これまでのところ、ポンド安のおかげでEU離脱前の英国を訪れる人は増えているようだ。 英政府観光庁によると、9月~11月までの英国行きの便の予約は前年に比べて5%増え、中国からの予約は23%増となった。

それでもジェンキンズ氏は、「中国市場は脆弱(ぜいじゃく)だ。それは完全に理にかなっていると思う」「違う文化から来る旅行者は、物資の供給が混乱するといった話に大きく影響される」と指摘する。

食品や医薬品や燃料が不足したとしても、外国からの旅行客が受ける影響は英国民に比べればはるかに小さいかもしれない。それでも「国境での食料不足や遅れを考えれば、英国が魅力的な目的地とは思えなくなる」とジェンキンズ氏は述べ、「合意なき離脱は率直に言って大混乱を引き起こす」と予想した。

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