絶滅危惧のベンガルトラ、50年以内に最大級の生息地から消滅の恐れ

スンダルバンスのベンガルトラ/Niladri Sarkar

2019.04.22 Mon posted at 11:26 JST

(CNN) 絶滅の危機に瀕(ひん)したベンガルトラに残された最後の生息地の1つ、スンダルバンス国立公園。密猟の横行や住宅地の拡大によって生存が脅かされる中で、50年以内にこの地からベンガルトラが完全に姿を消してしまう恐れがあるという研究結果が、このほど発表された。

スンダルバンス国立公園はインドとバングラデシュの国境地帯にあり、広大なマングローブの森が広がる。野生のトラはこの100年の間に世界で95%が死に絶え、残る個体は4000頭を切った。ベンガルトラはアジアの数カ国に生息しているが、スンダルバンス国立公園の個体数は数百頭に上る。

しかし海面上昇が予想以上のペースで進んだために一部の島が水没するなどして、スンダルバンス国立公園の面積は急激に縮小しつつある。

バングラデシュ側のスンダルバンス地域では、2004~2015年の間にベンガルトラが440頭から106頭に減った。密猟がエスカレートして生息環境が悪化し、生息地が分断されて危険な状況に陥っていると、世界自然保護基金(WWF)の専門家は危機感を募らせる。

地元の大学の研究チームは、地球温暖化ガスの排出量が増え続ける中で、トラの生息に適したスンダルバンスの環境がどこまで保たれるかを予測した。

その結果、海面の上昇や異常気象、水や土壌の塩分増加によって、ベンガルトラは2070年までにスンダルバンスから完全に姿を消してしまう可能性があることが分かった。

この研究を行ったバングラデシュ・インディペンデント大学のシャリフ・ムクル氏によると、海面の上昇や降雨量の減少によって水に含まれる塩分量が増えた影響で、スンダルバンスの地名の由来となったスンダリの木は枯れ、トラが生息するマングローブの森は縮小している。

無線の首輪を装着したベンガルトラが川を歩く様子=スンダルバンスのインド側

トラの生存に欠かせない淡水も減りつつあるといいい。「もしこのまま海面の上昇が続けば、ベンガルトラの(生き残る)術はなくなってしまうかもしれない」とムクル氏は話す。密猟によってトラの餌となるシカも激減している。

淡水が減り、餌も少なくなる中で、ベンガルトラが人の住む集落に迷い込んで死者が出るトラブルも続出。2013年の調査では、年間に少なくとも3頭のトラが、人との衝突によって死んでいることが分かった。

バングラデシュ側のスンダルバンス地域でトラと遭遇して死亡する人は、年間平均で20~30人に上る。ただしこの数字には、トラの生息地に許可なく侵入して死亡した人は含まれないことから、実際の人数はもっと多い可能性もある。

地元では人とトラの衝突を防ぐ取り組みも進められており、保護団体代表のアンワルル・イスラム氏によれば、そうした活動が奏功して、人がトラに襲われたり死亡したりした件数は、この5年の間に減少した。

それでもトラの生息地を守るためにはもっとやるべきことがあるとイスラム氏は話し、スンダルバンスが海に沈めばトラたちは行き場を失うと指摘している。

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