ドローンによる大統領暗殺未遂の舞台裏、首謀者が語る ベネズエラ CNN EXCLUSIVE

マドゥロ大統領を狙った昨年の暗殺未遂事件の首謀者に、CNNが独占取材を試みた/JUAN BARRETO/AFP/AFP/Getty Images

2019.03.15 Fri posted at 18:00 JST

コロンビア・ボゴタ(CNN) 南米ベネズエラで昨年8月に起きたマドゥロ大統領の暗殺未遂事件。インターネットで買った市販のドローンに爆弾を仕掛けて国家元首の暗殺を謀った初めての事件だった。

この計画の首謀者を名乗る男性によると、計画を実行したのはベネズエラ軍の離反者などでつくる集団だった。男性はこのほど匿名でCNNの独占取材に応じて犯行を準備した時の状況を振り返り、ドローンや爆弾、農場で行った飛行実験の様子を携帯電話で撮影した映像を提供した。

男性はマドゥロ政権について、「我々は民主主義をまとった独裁政権を終わらせるため、平和的で民主的なあらゆる手段を試みてきた」と主張。襲撃で無関係の市民が巻き添えになるリスクも織り込み済みだったとし、「その点は気にかけていた。ベネズエラ国民はそうした結果を重く受け止めるのが常だから」と語った。

マドゥロ大統領はこの日、首都カラカスで行われた軍事パレードで演説していた。そこへ突然、爆発音が鳴り響き、市民や兵士が散り散りになった。

この時の状況は後になって判明した。会場の上空を飛行していた2機のドローンが爆発。いずれも距離が離れていたことから死者は出なかったが、国家警備隊の7人が負傷した。マドゥロ大統領にけがはなかった。マドゥロ大統領は後に、花火だと思ったと語っている。

ベネズエラ当局はこの事件の背後関係を探る捜査を開始し、数十人が逮捕された。活動家によると、中には拷問を受けた人もいるという。容疑者の一部は今も逃走を続けている。

マドゥロ大統領は、極右の活動家やコロンビア政府が関与したと主張したが、コロンビア政府は関与を否定、CNNの取材に応じた男性も、コロンビアは関与しなかったと証言した。

暗殺計画の首謀者らがネットで取り寄せたドローン

男性はこの犯行について、ベネズエラ軍の離反者を含むグループが、マドゥロ大統領を暗殺する目的で計画したものだと打ち明け、事件後に複数の米当局者と3回にわたって会ったと主張する。「目的はこの件について調べるための情報収集だったと思われる。だがそこから先へは行かなかった」

「彼らは情報を得たいとし、我々は引き換えに物質的な協力を求めた。彼らはそれを書きとめ、我々は手を貸してもらえるかどうか尋ねた。彼らは自分たちで書きとめただけで、二度と姿を見せなかった」。男性はそう語っている。

米国務省報道官は、この証言に関するコメントは避け、「ベネズエラにおける平和的な政権の移行を支援するのが我々のポリシーだ」とコメントした。

男性によると、暗殺計画は、警護隊がドローンを目標に届く前に爆発させることによって阻止した。大統領を守る携帯電話の妨害電波が突然復旧し、爆発を引き起こしたという。

こうした証言の一部は、ベネズエラ政府の説明とも一致している。

計画の準備は隣国コロンビアの農村にある農場を借りて行われた。マドゥロ大統領の演説の数週間前、ベネズエラ軍の離反者たちがインターネットで市販のドローンを米国から取り寄せ、改修して遠隔操作アプリ経由で手製爆弾を爆発させられるようにした。

映像では数人の男性が、ドローンのねじが小さすぎるなどと文句を言い、1人は箱に書いてある中国語の文字がよく読めないと言っていた。

実験の様子を映した映像では、検出を免れるためにドローンを高い高度で飛行させ、そこから急降下して目標を攻撃していた。場所や設定を変えた実験や、ドローン1機を爆破する実験も行っていた。

集団はその後、マシンを解体してベネズエラへ密輸し、暗殺目的で使う2機のドローンをベネズエラ国内で組み立てていた。

首謀者が語る、大統領暗殺未遂の舞台裏 ベネズエラ

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