米、INF全廃条約を停止 「ロシアが長年違反」

ポンペオ米国防長官がINF全廃条約の履行停止を発表

2019.02.02 Sat posted at 11:40 JST

ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を停止すると表明した。冷戦時代から欧州の安全保障の要となっていたが、ロシア側の違反が数年にわたり続いたことが要因だとしている。

ポンペオ氏は国務省での会見で「ロシアが反省の色を見せずに長年にわたりINF条約に違反してきた」と言及。ロシアの違反で欧州や米国の国民が多大なリスクにさらされていると主張した。

さらに「適切な対応するのが我々の責務だ」とした上で、米国はロシアが順守を再開するために「十分な時間」を与えてきたと述べた。

履行停止は2日から始まる。今回の動きはかねて予想されていたもので、米ロ間の軍拡競争が再燃する懸念を引き起こし、欧州では同盟国が神経をとがらせる事態となってきた。ロシアが順守を再開しない限り、米国は180日後に完全に離脱する。

INF条約は1987年に締結され、米国はロシアが2014年から違反してきたと指摘している。

トランプ大統領は1日の声明で、「米国は30年以上にわたりINF条約を完全に順守してきたが、ロシアが自国の行動について虚偽の説明を続ける限り、このまま条約の条件に縛られるつもりはない」と表明。「世界で我々だけが一方的にこの条約や他の条約に縛られるわけにはいかない」と述べた。

この後ホワイトハウスでは、新条約の交渉に前向きな考えを記者団に示唆したが、ロシアには言及しなかった。

INF条約の参加国は米ロ2カ国だけだが、欧州の安全保障に及ぼす影響は大きい。条約では核弾頭を搭載した地上発射型巡航ミサイルのうち、欧州にとって脅威となる射程距離約500~5000キロのものを対象としている。

昨年7月にヘルシンキでの米ロ首脳会談時のトランプ大統領(左)とプーチン大統領

北大西洋条約機構(NATO)は声明で、米同盟国は米国の決定を「完全に支持する」と表明。ロシアの欧州及び大西洋に及ぼす脅威や、完全かつ検証可能な順守の確認に向けた対応拒絶を理由に挙げた。今後の6カ月で順守状態に戻るように求めているが、当局者の間では悲観的な見方が広がっている。

米議員や当局者からはINF条約が中国に軍事的優位をもたらす結果になるとの危惧を示す声もある。中国は条約当事国ではないためINFに関する縛りがない。

トランプ大統領も記者団に対し「まずは国を追加しないといけない」と述べ、中国を意識した発言と受け取られている。

ただ、政権高官は今回の決定は中国は要因ではないと否定。中国は1000発以上のINFを保持しており多くの議論が行われているが、今回は単にロシア側の違反が問題だったと述べた。

ロシア政府は一貫して条約違反を否定している。国営タス通信によると、リャブコフ外務次官は先月31日、米国との交渉に進展がなく、米国側の姿勢は強行で最後通告に近いと発言。ロシアをゆするような条件での対話には応じられないと伝えたと不満を示していた。

米、INF全廃条約を停止

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