たばこの吸い殻は最悪のプラスチック汚染物質、フィルターでがん防止できず

プラスチックの汚染物質として最も数が多いのはたばこの吸い殻だという/Jim Mone/AP

2019.01.28 Mon posted at 17:05 JST

(CNN) 環境汚染の原因となる物質としてプラスチック製ストローやレジ袋に対する風当たりが強まる中、それ以上に大きなプラスチック問題を生じさせながら、規制をすり抜けている汚染源がある。たばこの吸い殻がそれだ。

プラスチックフィルターが含まれるたばこの吸い殻は、捨てられる量が世界一多い。

たばこのフィルターは生物分解可能な素材でできていると思われがちだが、実際にはプラスチックの一種の酢酸セルロースが使われており、分解されるまでには最大で10年かかる。

欧州連合(EU)は、この隠された問題への対応に乗り出した。使い捨てプラスチックを減らす対策の一環として制定した新規定では、たばこ業界に対し、吸い殻の清掃のための資金拠出を義務付ける。

1年間に製造されるたばこは約6兆本。うち90%以上にプラスチックフィルターが含まれる。これは100万トン以上のプラスチックに相当する。

世界保健機関(WHO)によると、ごみの投げ捨ての中でも特に横行しているのがたばこの吸い殻の投げ捨てで、吸い殻の約3分の2は無責任に捨てられる。路上や側溝に捨てられた吸い殻は、排水を伝わって河川や海に流れ込む。

河川や海洋を汚すたばこの吸い殻が、そこにすむ生物の命も奪っている

米国の海洋保護団体が毎年行っている世界のビーチの清掃活動で回収したごみは、活動を始めた1986年以来の統計で、たばこの吸い殻が最も多かった。ボランティアが集めた吸い殻は6000万本を超えている。

最近の研究では、たばこの吸い殻を浸した水に魚を入れると、4日後に半分の魚が死ぬという実験結果も発表された。この実験についてサンディエゴ州立大学の専門家は、「たばこの吸い殻が原因で海洋環境に有毒物質が染み出し、生物を死なせている」と指摘する。

プラスチックフィルターは、肺がんの不安に対する対策として1950年代に発明された。有害物質を遮断することにより、がんを減らすのが狙いだった。

しかし1960年代半ばになると、フィルターで除去されるタールやニコチンこそが、愛煙家に満足感を与えていることが判明。たばこ会社はフィルターをキープしながら、効果を低減させ、ニコチンがフィルターを通過しやすいようにした。

実際のところ、フィルター付きのたばこを吸えば、最も一般的な種類の肺がんの発症率は減るものの、別の種類の肺がんである腺がんの発症率は増える。つまり、フィルターは愛煙家の健康状態改善の役には立たない一方で、環境問題を悪化させる。

2018年10月、欧州議会は、たばこフィルターのプラスチックを2025年までに50%、2030年までに80%削減することをEU加盟国に義務付けるという野心的な提案を支持した。

しかしその後、この削減目標は退けられた。代わって導入された規定ではたばこ会社に対し、啓発キャンペーンの実施や灰皿設置のための資金を拠出し、環境破壊の原因となるプラスチックがフィルターに含まれていることをたばこの箱に表示することなどを求めている。

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