3Dプリンター、航空機製造で存在感増す 納期短縮やコスト削減へ

航空機の製造現場で3Dプリンターの利用が拡大している/Dan Kitwood/Getty Images

2019.05.03 Fri posted at 16:05 JST

ロンドン(CNN Business) 今度搭乗する航空機は部品の一部が3Dプリンターで製造されている可能性が高そうだ。世界の大手航空宇宙企業は現在、3Dプリンターの使用を増やし、製造工程のスピードアップや資金の節約、燃費の改善に取り組んでいる。

米ボーイングや欧州エアバスでは、3Dプリンターの活用が膨大な受注残の消化につながりそうだ。また、従来の手法に比べて高品質の部品を製造することも可能になる。

エアバスのグラチア・ビッタディーニ最高技術責任者(CTO)は3Dプリンター技術について、「通常の切削加工では実現不可能な複雑さの部品を製造できるようになる」と話す。

エアバスは2014年、3Dプリンターによる部品を使った初の航空機を離陸させた。この部品というのは小さなチタン製ブラケットで、重いエンジンを支えるパイロンの一部となっていた。

こうした技術は今や、新造機の需要増大に対応する航空機メーカーにとって欠かせないツールになっている。

3Dプリンターは素材の層を幾重にも重ねることで固体を作りだす。材料にはプラスチックが使われることが最も多いが、最近はチタンやステンレス、セラミックス、砂も増えてきた。

この技術は別名「アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形)」としても知られ、試作品や個人用品の製造のほか、本来は、鋳型(いがた)や特殊な機械が必要な製品を作るのにも使われている。

航空機メーカーや部品供給業者ーにとっては、高価な道具や鋳型の必要性を減らすのに役立ちそうだ。

ボーイングはこれまで、3Dプリンターで6万個の航空機部品を製造。全体で見ればわずかな割合だが(通常のボーイング747型機には600万個の部品が使われている)、積極投資を続けている。

2018年8月には、金属部品製造の速度や量の向上につながるとの理由から、3Dプリントを手掛ける企業デジタルアロイに出資した。一方、エアバスもベルギーに本社を置くマテリアライズと提携している。

3Dプリンターで作られた頭上収納棚の部品

国際航空運送協会(IATA)の予測によれば、旅客数は今後20年で倍増して2037年には82億人に達する。必要となる航空機数も大幅に増える見通しで、3Dプリンターの出番となりそうだ。

エアバスのビッタディーニ氏は「製造ペースを上げている。我々は多くの教訓を学んだ」と話す。エアバスはエンジン不足への対応に苦戦し、単通路機「A320ネオ」の納入に遅れが出た。

18年11月末時点でのエアバスの受注残数は7337機で、現在の製造ペースいくと消化に9年かかる。一方、ボーイングも9月末の段階で5849機の受注残を抱えている。

3Dプリンターにより軽量素材の使用が可能となり、環境対策にも一役買うとみられる。

ビッタディーニ氏は「世界の航空機数は15年ごとに倍増する。ビジネス面では素晴らしい」としつつ、「問題は排気や騒音、炭素燃料の消費も2倍になることだ。これは維持不可能だ」と指摘する。

排気量減少の理屈は単純だ。より軽い航空機の導入で燃料消費が減少する。「必要なところにだけ材料を使うことが可能となり、最大で55%の軽量化を実現できる」(ビッタディーニ氏)

一部の専門家からは、ハッカーが欠陥を意図的に挿入して、部品の強度を弱める可能性を懸念する声も出ている。

2016年の実験では、大学の研究グループがこの危険性を実証。3Dプリンターのハッキングによりプロペラに欠陥を組み込むことで、ドローンを墜落させた。

ボーイングとエアバスは両社とも、規制当局から安全と認定された方法でのみ3Dプリンターを使う方針だ。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。