食用からペットへ、韓国で犬の境遇に変化 大統領も雑種犬の里親に

公約通り黒い雑種犬「トリ」の里親となった韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領/CARE

2018.12.26 Wed posted at 16:40 JST

ソウル(CNN) 今は5歳になった黒い雑種犬の「トリ」は、かつての飼い主から何年も虐待を受けていた。動物愛護団体に助けられて保護施設で2年間過ごし、2017年6月、文在寅(ムンジェイン)大統領に引き取られて韓国の「ファーストドッグ」に。今は青瓦台の庭園で優雅な暮らしを楽しんでいる。

保護犬を引き取ることは、文大統領が掲げた選挙公約の1つだった。狙いは捨てられた犬たちのことを知ってもらい、動物の権利を訴えることにあった。

文大統領の愛犬にはその後、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長から贈られた猟犬2匹が加わっている。

トリの境遇は、犬が食肉と見なされていた時代から、大切な家族へと変わった韓国社会の移り変わりを物語る。

犬を食用とする韓国の習慣は、国際社会の非難の的になっていた。国際動物愛護団体は韓国の農場から犬を引き取り、米国や英国など海外の施設で保護する活動を続けている。ヒューメーン・ソサエティ・インターナショナル(HSI)によれば、活動を始めた2015年以来、韓国の農場13カ所から保護した犬は1600匹近くに上る。

犬の肉を食べる韓国人はここ数年で減少し、一方でペットとして犬を飼う家庭は急増している。韓国の動物保護活動家は、犬肉の取引市場を閉鎖させる運動の先頭に立つ。

ソウルで犬肉料理を出す飲食店の数は、主に需要の減退により、2005~14年にかけて40%減った。韓国国会では、犬を家畜の分類から除外する法案と、農場などで犬の餌として食品廃棄物を与えることを禁止する法案が提出された。この2つの法案が成立すれば、ただでさえ縮小している犬肉業界は、ほぼ崩壊する可能性がある。

HSIなどは、犬肉業界から離れる農場を支援する活動も展開し、金銭的サポートを提供している。

トリミングサロンなどのペット業界は、今や韓国内の巨大産業に成長

世論調査機関のギャラップが韓国で今年6月に実施した調査では、もう犬肉は食べないという回答が約70%に上り、2015年の44%から大幅に増えた。

犬に対する見方が変わった一因として、競争が激しくなり、単身世帯が増えて人間関係に対するストレスが強まる中で、無条件の愛情を示してくれる犬をペットとすることの人気が高まったと専門家は解説する。

KB金融グループによると、韓国の成人は4人中1人がペットを飼うようになり、飼い主はペットのために毎月約90ドル(約1万円)を出費している。

ペットを飼う人が増えるにつれ、ペット保険や犬の託児所、トリミングサロンなどの業界も成長した。

農業協同組合によると、2013年に11億4000万ドルの規模だった韓国のペット業界は、17年には34億ドルへと増大し、20年には54億ドルに成長する見通しだ。

ソウルの市内では今、最新のファッションをまとった犬を見かけることも珍しくなくなった。百貨店はオーガニックペットフードやエジプト綿を使った犬用ベッド、フランスから輸入した犬用カートなどを扱っている。

全ての犬がそんなぜいたくな暮らしをしているわけではない。それでも韓国で犬の地位が変わりつつあるのは明らかだ。伝統的な食文化にこだわり続けようとする農家もあるかもしれないが、犬は今、食卓に上るよりも、家族の一員として写真に収まることの方がずっと多くなっている。

韓国で犬の境遇に変化、食用からペットへ

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。