米政府報告書、気候変動に警鐘 トランプ氏主張と矛盾

CNN

2018.11.24 Sat posted at 10:48 JST

(CNN) 米政府は23日、気候変動とその影響に関する報告書「第4次全米気候評価」を発表した。気候変動に伴う米経済の損失は今世紀末までに数千億ドルに達し、最悪のシナリオでは国内総生産(GDP)の10%以上を失う可能性があるとしている。

報告書は連邦政府によって作成が義務づけられている。12月に公開されるとみられていたが、トランプ政権は連休中の国民が多い23日に発表した。今回発表されたのは同報告書の第2巻で、第1巻は昨年11月に公開されている。

米海洋大気局(NOAA)環境情報センターの技術サポート部門責任者、デービッド・イースターリング氏は、「報告書をまとめる過程で外部からの干渉はなかった」と強調した。

さらに、「世界の平均気温は近代文明が経験したことのない高さと上昇ペースになっている」と指摘。こうした温暖化傾向は人間の活動によってしか説明できないと述べた。温室効果ガスの大きな削減が実現しない場合、産業革命以前と比べて気温が今世紀末までに5度以上上がるという。

報告書は13の連邦機関から集めたチームがまとめた。代表的な科学者300人を含む1000人の支援を受けそのうち約半数は政府外からの支援だった。

報告書の内容は、気候変動をでっち上げだとするトランプ大統領の主張と食い違っている。トランプ氏は21日、一部の国民にとってこの100年で最も寒い感謝祭になるとの見通しに触れ、「地球温暖化はどうなったんだ?」ツイートしていた。

報告書は山火事による焼失面積の増加も指摘する

報告書によると、気候変動に伴うコストは年間数千億ドルに上る可能性がある。米南東部だけでも、異常な暑さで2100年までに5億時間の労働時間が失われるとみられている。

農家に対する影響は特に大きく、高温化や干ばつ、洪水により全米で作物の量や質が落ちるという。熱ストレスによる生産性の低下、海洋の酸性化に伴う貝類の死滅での経済損失も指摘されている。

健康面では、高温化による死者が増加する見通しで、中西部では2090年までに早死にする人が年間2000人増えるとしている。蚊やダニを媒介する病気の増加、ぜんそくやアレルギーの悪化、食品や水由来の疾病リスクも挙げられている。特に夏の高温は、子どもや高齢者、経済的困窮者などの病気や死亡を招く恐れがあるという。

自然への影響では、山火事で年間焼失する面積が2050年までに現在の6倍に増え、ハワイやカリブ海では高温により安全な飲み水が脅かされると指摘。海面上昇や高潮も発生し、華氏100度(摂氏約37.8度)を超える日が増加する。

今世紀中頃には北極の海氷が夏の終わりに全て解け、永久凍土の融解を誘発。さらに多くの二酸化炭素やメタンガスが放出される結果となり、温暖化を加速させる可能性があるという。

報告書は政策担当者に情報提供する目的で作成され、対応策に関する具体的な提言は記載されていない。ただ、米国が直ちに化石燃料の使用や温室効果ガスの排出を削減すれば、多くの人命を救い経済的に巨額の利益を得られる可能性を示唆している。

米政府報告書、気候変動に警鐘

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