砂浜に出現する謎の巨大模様、作者が込めた思いとは 英国 

英ウェールズの砂浜に出現し、人々を驚かせる巨大アート/Courtesy Marc Treanor

2018.12.28 Fri posted at 17:35 JST

(CNN) 英国・ウェールズ南西のペンブロークシャー海岸沿いの砂浜を度々訪れる人は、砂の上に描かれた不思議な模様を目にしたことがあるだろう。

この巨大で複雑な模様は、地元の砂上アーティスト、マーク・トレーナー氏の作品だ。

トレーナー氏は、ミステリーサークル(トウモロコシ畑や小麦畑に時折出現する不可解な模様)をヒントに、熊手を使って湿った砂の上に驚くほど手の込んだ模様や絵を描いている。

そして描き終えると、苦労して描いた作品が、打ち寄せる波によって少しずつ消されていく様子を眺める。しかしトレーナー氏は、砂上のアートははかないもので、波に消されるのも作品の不可欠な要素、と語る。

3段階のプロセス

トレーナー氏によると、完璧な砂上画を制作する上で重要な3つの段階があるという。

第1段階:自宅で紙に模様を描く

第2段階:砂浜に行き、熊手を手に取り、模様の制作に取り掛かる

完成後、波が模様を少しずつ消していく様子を眺めるまでが制作のプロセスだという

そして模様が完成したら、いよいよ最も楽しい第3段階に入る。

「この第3段階は黙想にふける時間でもあるので、理想としてはよく見える場所があり、模様の制作に関わったすべての人が崖の上に上って、砂浜を見下ろし、模様が海に吸い込まれていく様子を眺める」(トレーナー氏)

人とのふれあい

トレーナー氏にとって最も印象深い作品の1つが、2015年の英総選挙の日に制作した作品だ。

ある時、トレーナー氏と友人が複雑な模様の制作に悪戦苦闘していると、見知らぬ人が協力を申し出た。3人は熊手で模様を描きながら会話を始めた。するとその人物は、自分の仕事は爆弾作りだと打ち明けた。トレーナー氏はその人物に対し批判的な感情を隠せなかったが、3人は協力して砂上の芸術作品を作り上げた。

そして3人は遊歩道に上り、作品を見下ろした。すると、その人物はいたく感動していたという。

トレーナー氏と友人はその人物を残し、2人で夕食に出かけた。そして約1時間半後に戻ると、その人物はまだそこにいて、ほとんど消えかかっていた模様をじっと見つめていたという。その姿を見たトレーナー氏は、友人を見て「彼の爆弾作りの日々は終わるだろう」と話したという。

このような予想もしなかった出会いや、思いもよらない(人と人との)つながりこそが、トレーナー氏の作品作りの特徴だ。孤独な作業と思われがちだが、実際は全くそんなことはない。

たしかに、他人は自分の思い通りに動いてくれないため、自分たちだけで描いた方がはるかに楽かもしれない。しかし、トレーナー氏は他の人に手伝ってもらった方がより大きな充実感が味わえるという。

現在では似顔絵の制作を依頼されることもある

新たな領域

ウェールズの海岸の至る所に模様を描いているうちに、トレーナー氏は次第に有名になり、砂の上に人の似顔絵を描いたり、地元の旅行代理店に雇われたり、さらには結婚のプロポーズを手伝うなど、さまざまなプロジェクトを任されるようになった。

これまで長距離トラックの運転手、庭師、医療機器のセールスマンなど、職を転々としてきたトレーナー氏だが、現在はこの砂のアートがフルタイムの仕事になりつつある。

そんなトレーナー氏も、冬になり、寒くなると海外の砂浜に作品を描きたくなるという。

トレーナー氏は将来、南アフリカやアメリカ西海岸、タイの砂浜に模様を描くことを夢見ているが、今もウェールズに強い愛着を持っている。

トレーナー氏にとって、自分の作品を通じて地元ウェールズの海岸の美しさが広く知られるようになるのは誇らしいことだ。今後もトレーナー氏の作品を見るためにさらに多くの人がこの海岸線を訪れることだろう。

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