ピーナツアレルギー患者に実験的療法、3分の2が少量の摂取可能に

ピーナツアレルギーの子どもを対象にした実験的療法で、一定の効果が確認された/Shutterstock

2018.11.19 Mon posted at 18:23 JST

(CNN) 米エモリー大学などの研究チームが、ピーナツアレルギーをもつ子どもを対象に実施した実験的療法によって、約3分の2が少量のピーナツを摂取できるようになったと発表した。意図せずにアレルゲンを摂取してしまうことによるリスクから患者を保護できる療法として期待される。

この研究は18日の米医学誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンと、米アレルギー・ぜんそく・免疫学会の年次総会で発表された。

この療法を受ければ、ピーナツやピーナツ製品を意図せず摂取してしまう事態から一部の子どもを守ることができ、ごく少量を食べられるようになる可能性があることも実証されたとしている。

エモリー大学医学校のブライアン・ビッカリー医師は、「これでアレルギーがなくなるわけではない」としながらも、決して小さな成果ではないと強調する。米食品医薬品局(FDA)に承認された食品アレルギーの治療法は存在せず、特にピーナツなどナッツ類のアレルギーをもつ人は米国で推定300万人に上る。

今回の実験的療法に使われた製品を製造した米バイオ医薬品会社エイミューン・セラフューティクスは、12月にFDAに承認を申請する。FDAはこの療法について、承認手続き迅速化の価値があると判断している。

ビッカリー氏によれば、来年夏の終わりごろまでには承認される見通しだという。

実験的療法は、10カ国にある66の研究施設でピーナツアレルギーをもつ4~55歳の患者554人を対象に、医師の厳格な監視の下で実施した。このうち496人は4~17歳の子どもだった。

ピーナツなどナッツ類のアレルギーをもつ人は米国で推定300万人に上る

被検者のうち3分の2には、アレルゲンであるピーナツの粉末をごく少量ずつ摂取してもらい、1日当たり1粒に相当する維持量に達するまで、2週間ごとに摂取量を増やした。

残る3分の1には偽薬を摂取してもらった。

1年後に全員が、医師の監視の下でピーナツ2粒に相当する量を摂取する「卒業試験」に臨んだ。その結果、療法を受けた患者のうち3分の2は重大なアレルギー反応が出ず、約半数は4粒に相当する量にも耐えることができたという。

副作用は全体的に、研究チームが予測したよりも少なかった。多くの患者はある程度のアレルギー症状が出たものの、3分の1は腹痛などの軽度な症状にとどまった。

被検者の1人、エリス・グローバーさん(10)は、摂取量を増やすごとに胃けいれんや嘔吐(おうと)の症状が出たものの、胃けいれんはすぐに収まった。

1度は気道が狭窄して呼吸しにくくなるアナフィラキシー反応に見舞われたが、すぐにエピネフリンを投与された。

11%の子どもは重度の副作用のため途中で療法を中止したが、「卒業試験」でエピネフリンの投与を必要とした子どもは、偽薬を摂取したグループが53%だったのに対し、療法を受けた子どもでは10%にとどまった。

アレルギー反応に改善が見られたという被験者の1人、エリス・グローバーさん(右)

子どもの食品アレルギーに詳しい米マウントサイナイ医科大学のスコット・ジヒャラー医師はこの療法について、「アレルギーが治癒するわけではなく、ピーナツバターサンドイッチが食べられるようになるわけでもない」と解説する。「ただ、意図せず少量のピーナツを食べてしまった場合でも反応が出ないか、それほどひどい反応が起きなくなる可能性がある」

ただし自宅で行えば深刻な反応が出る恐れがあり、「自宅で試すべき療法ではない」と強調した。

ジヒャラー医師によると、エイミューンはピーナツを「医薬品グレード」の製品とすることで、医師や患者が正確な摂取量を把握できるようにした。副用に当たっては、医師の指示に従って毎日必ず決められた通りに服用し、保護者が注意深く見守るなど細心の注意が必要だとしている。

薬の味は苦手だというエリスさんも、試してみて本当に良かったと話し、「これで友達がピーナツバターを食べている時も一緒にいられる」とうれしそうな様子だった。

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