(CNN) ホームレスの男性が所持金をはたいてカップルを助けたという美談。ソーシャルメディアで評判になり、男性支援の名目で40万ドル(約4500万円)の寄付が集まった。ところがこの美談はでっち上げだったことが分かったとして、ニュージャージー州バーリントン郡の検察は15日、3人を窃盗などの罪で起訴したと発表した。
起訴されたのは、ケイト・マクルーア被告と交際相手のマーク・ダミコ被告のカップル、およびホームレスだったジョニー・ボビット被告の3人。
マクルーア被告らは、フィラデルフィアで車が動かなくなった時にボビット被告と出会い、ボビット被告の最後の所持金だった20ドルをもらって、ガソリンを買うことができたと説明していた。カップルはボビット被告に感謝の気持ちを伝えるためとして、クラウドファンディングサイトで寄付を募った。
この経緯について、スコット・コフィナ検察官は記者会見で、「寄付金を集めた恩返しの話は出来すぎている印象だった」と述べ、「残念ながら、本当に出来すぎだった。キャンペーンは全て、うそに基づいていた」と指摘した。
検察官によると、キャンペーンの結果、手数料を差し引いて約36万7000ドルが集まり、全額がマクルーア被告の口座に振り込まれた。ボビット被告は7万5000ドルを受け取り、マクルーア被告とダミコ被告は自動車や高級ハンドバッグ、旅行、カジノなどに多額を費やしていたという。
ボビット被告はマスコミに登場するなどして、キャンペーンの宣伝に一役買っていた。
ところが捜査の結果、マクルーア被告が友人に「ガソリンを待つ部分は完全な作り話。気の毒に思ってもらうためにでっち上げる必要があった」などのメールを送っていたことが判明。ダミコ被告との間で、公共料金が払えないことや借金がかさんでいることについて話し合っていたことも分かった。
ボビット被告が2012年、フェイスブックに今回とそっくりの話を書き込んだ投稿も見つかった。
クラウドファンディングサイトは、寄付を寄せた1万4000人全員に全額を払い戻すことを約束しているという。
マクルーア、ダミコの両被告は14日夜に出頭し、その後釈放された。ボビット被告はフィラデルフィアで拘束されている。
ボビット被告は数カ月前、自分のために集めた寄付金をカップルが手放そうとしないとして提訴していた。
もし3人の間で金銭を巡る争いになっていなければ、寄付金をだまし取ることに成功していたかという質問に対して、検察官は「そうなっていた可能性は大きい」と話している。