インド・ベンガルールの交通渋滞、日本の技術で緩和目指す

インド・ベンガルールで日本のITS技術を活用した渋滞緩和への取り組みが進められる/JICA

2018.11.05 Mon posted at 17:17 JST

(CNN) インドのシリコンバレーとも呼ばれるIT産業の中心地ベンガルール(バンガロール)。だがインド国内の技術ではなく、日本の技術を使って悪名高い渋滞の解消を目指すプロジェクトが進んでいる。

地元当局者によれば、新しい「高度道路交通システム(ITS)」によって、主な交差点の渋滞は3年以内に30%削減できる見通しだ。

市全域にカメラやセンサーを設置し、公共バスにはGPS装置を搭載して混雑の程度を把握。そのデータを交通管理センターに送り、渋滞がひどい地点の混雑解消を図る。

1130万ドル(約13億円)をかけたプロジェクトは日本が予算を拠出し、国際協力機構(JICA)が地元ベンガルールと連携して進めている。

システムは2019年3月から導入に着手する予定で、20年半ばまでにITSの運用を開始する。

ベンガルールには世界トップ級のソフトウェア企業が集まっている。しかしインド工科大学の専門家によると、20世紀半ばまでは「ガーデンシティー」と呼ばれ、引退した人たちが緑豊かな環境を楽しむ街として知られていたという。

しかしこの30年の間にIT産業によって市のイメージは一変し、人口も激増した。ITSのプロジェクトでは、それによって生じた渋滞問題の解消を目指していると、JICAの担当者は説明する。

朝のピーク時に市内を移動する場合の平均速度は時速13キロ。この渋滞は地元経済の足かせになっているという。

ちなみに、渋滞のひどい世界1360都市を比較した昨年の調査で最悪とされた米ロサンゼルスは、平均時速16キロだった。

ITSではベンガルール市内で特に交通渋滞のひどい12カ所に72個のセンサーを設置。超音波を使って60秒ごとに、渋滞の長さといった情報を収集する。

日本の交通管制センター。似たような施設がベンガルールにも導入される

バス6700台に搭載されたGPS装置では、走行スピードに関する情報を収集し、市内8カ所に設置したカメラとセンサーでは交通量や速度を調べる。

29カ所の交差点には新しい信号機を設置。この信号機を連携させて、可能な限り、1つの青信号を通過した車両が次も青信号になる「緑の波」を作り出す。

ITSの技術は日本で1990年代から使われているといい、JICAはスリランカやカンボジアでも同様のシステムを導入したほか、ウガンダでもプロジェクトを進めている。

2017年にJICAの支援でロシアの首都モスクワに導入されたITSは、40%の渋滞解消につながった。

ただしベンガルールでの効果については懐疑的な声もある。インド理科大学の専門家は、「残念ながら、(同システムは)限定的な影響しか及ぼさないだろう。特に朝夕のピーク時の交通は既に超飽和状態に達しており、このような交通管理対策で実質的な影響を及ぼすことのできる範囲は限られる」と指摘する。

一方、インド理科大学の別の専門家は、ベンガルール市民はIT技術に精通しており、今回のようなスマートシステムを成功させる助けになるだろうと予想。「低所得世帯は職場から遠い場所に住むことを強いられる場合も多く、通勤時間が長くなって経済的生産性の低下につながる」「渋滞は個人間の経済格差を拡大させかねない」と話している。

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