F22デモ飛行チームで初、アフリカ系パイロットが見据えるもの

飛行に向けて準備するポール・ロペスさん/USAF

2018.12.17 Mon posted at 18:00 JST

アトランタ(CNN) 米バージニア州バージニアビーチの自宅の上空を米軍戦闘機がごう音を立てて飛んでいく――。ポール・ロペスさんは、子ども時代のそんな思い出を今でも大切に胸に秘めている。

「F14トムキャットやF18ホーネットを見るたびに、あのコックピットに座って編隊飛行するのはどんな感覚なんだろう、といつも思っていた」と語るロペスさん。今では米空軍が編成するF22のデモ飛行チームで初のアフリカ系パイロットだ。「あれが情熱の原点だった」と振り返る。

ロペスさんが操るF22ラプターは空軍のステルス戦闘機で、空中戦や対地戦を念頭に開発された。

デモ飛行チームは、オーストラリアやチリ、カナダといった各地の航空ショーで空を駆けている。その使命はラプターの曲芸飛行能力を示すことだが、一方で空軍のPRの役割も多少兼ねている。

米軍のデモ飛行隊にはF22チームのほか、海軍の「ブルーエンジェルス」や空軍の「サンダーバーズ」といった曲芸飛行チームもある。航空ショー関連の国際団体によると、米国とカナダだけで毎年少なくとも325のショーを開催。年間およそ1億1000万ドルの収益を上げるビジネスとなっている。

ラプター

F22は世界最高水準の技術を搭載した戦闘機で、そのステルス機能や空力性能、コンピューターシステムは他機の追随を許さない洗練ぶりだ。

F22の技術は機密性が非常に高く、空軍はコックピットの撮影を許可していない。

空軍基地での訓練中にF22の兵器倉を開く様子

米連邦法では国家安全保障上の理由から、他国へのF22の売却を禁じている。

最高速度は時速約2400キロで、米国のジェット機としては初めて「スーパークルーズ(超音速巡航)」が可能となった。燃費効率の悪いアフターバーナーを使用しなくても長時間にわたり超音速飛行を続けることができる。

ロシアの爆撃機が米領空に接近した際、緊急発進することも多い。

多様性

F22のデモ飛行チームが発足したのは2007年。チーム初のアフリカ系パイロットに選ばれたことについて、ロペスさんは「光栄だ」と語る。

「偉大な先人たちのおかげで今の私がある。空軍がいかに多様性を尊重しているかの証しだ。すべてのデモ飛行チームを見てもらえれば、多様な出自の人々が一丸となって空軍の力を示していることが分かる」

米空軍はここ最近以降、多様性の拡大に努めている。

同軍によれば、所属の全パイロットに占めるアフリカ系米国人の割合はわずか1.7%にすぎない。

米ランド研究所は2014の報告書で、過去20年の間に人種的少数派や女性の将校が大幅に増えたとしているが、その数は依然として米国全体の人口構成には及ばない水準だ。

ネブラスカ州の空軍基地でファンを歓迎するロペスさん=昨年8月

ロペスさんは、自身の使命のひとつに普及活動を挙げ、「この仕事の最も重要な部分だ」と強調する。空軍は常に才能ある若者を探しており、航空ショーには空の世界に興味を持つ人々が集まってくる。

「多くの場合、若者は航空機を操縦したくても飛行訓練を積む資金がない」「周知が進んでより多くのチャンスが手に入るようになれば、空を飛ぶ人も増えるはずだ」

目標と夢

ロペスさんの子ども時代、父親は海軍に所属していた。両親は息子の空の世界への情熱に気付き、それを育んだ。次第に航空ショーに連れて行くようになり、航空宇宙関連の本も買い与えた。

ロペスさんは間もなく大学に目標を定めるように。ノースカロライナA&T州立大学で学位を取るとともに、空軍の予備役将校訓練課程にも参加した。

「周囲には自分の目標や夢を伝えていた。周りの助けもあり、パイロット養成コースの選抜に向けて正しい道を歩むことができた」とロペスさん。「懸命に頑張った結果、今では夢が現実になっている」と話す。

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