米中艦船の異常接近、写真で如実に 南シナ海で米海軍撮影

南シナ海で米駆逐艦に異常接近する中国軍の艦船の写真が公開された/U.S. Navy

2018.10.04 Thu posted at 16:50 JST

(CNN) 中国が主権を主張する南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島のガベン礁付近で先月30日発生した米海軍駆逐艦と中国軍駆逐艦の異常接近で、衝突しかねない事態にまで陥っていたことを示す米海軍撮影の空中写真が存在することが4日までにわかった。

CNNの求めで写真を分析した元米海軍大佐は、とっさの回避行動がなければ数秒後に衝突していた恐れがあったと指摘した。

写真は米海軍航空機が撮影したものだが、海軍は公表していない。ただ、写真4枚が海事専門家らのサイト「ジーキャプテン」に掲載された。米政府当局者3人がCNNの取材に写真は本物と確認した。

写真で見ると、蘭州級の中国駆逐艦は背後から米誘導ミサイル駆逐艦「ディケーター」に近寄り、左舷側に並走するように接近。この状況では海軍関連活動の国際法に照らした場合、ディケーターに航行の優先権があり、同時に方角と速度を維持する義務が生じる。

一方、中国駆逐艦は安全な距離を保ち、米軍艦船のそばを航行する責務を担う。しかし、今回はディケーターに接近した際、右方へ唐突にかじを切り、ディケーターの艦首の方向に割り込むような行動を示したという。

ディケーターはこれを受け、前方への航行を停止する緊急かつ大胆な操舵を強いられた。車に例えれば、急ブレーキを掛け、衝突を避けるためハンドルを右に大きく切る動作に似ているとの指摘もある。

米海軍は1日の声明で、両艦船間の距離は41メートル以内だったとし、中国側は現場からの退去を求める警告を含む攻撃性を強めていく一連の措置を取ったと非難した。

米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」が行った実弾演習の様子

米軍は南シナ海で環礁などを埋め立て、レーダー配置や滑走路建設、兵器配備を進めて主権構築をにらむ中国の動きに反発。これらの環礁近くなどで艦船航行や航空機の上空飛行を実施し、中国をけん制する「航行の自由作戦」を展開し続けている。ディケーターの今回の航行は同作戦の一環となっている。

一方、中国国防省の報道担当者は2日、中国は同海における自国の主権を防御しただけと主張。中国軍は今後も断固として国防の責務を果たし、地域における主権や平和、安定を守るために必要な全ての手段に訴え続けると強調した。

スプラトリー諸島などの島しょや環礁の領有権は複数の沿岸国・地域が争っている。

貿易摩擦などに襲われる米中関係は現在、冷え込んでおり、その余波は両国間の軍事交流にも及んでいる。中国は最近、米海軍の強襲揚陸艦「ワスプ」の香港寄港を拒否。マティス米国防長官による10月の訪中や中国軍幹部との会談計画も凍結となった。

この中で米海軍は最近、ワスプが先月に南シナ海で実施した実弾演習の一部の写真を公開。また、戦略爆撃機「B52」も先週、南シナ海や東シナ海上空に飛来していた。

あわや衝突、米中艦船が異常接近

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