早期乳がん患者、「約7割は化学療法の必要なし」 米研究

早期乳がんの患者に対する化学療法の必要性について、新たな研究結果が報告された

2018.06.04 Mon posted at 18:02 JST

(CNN) 早期乳がんの患者に対する化学療法の効果を調べた大規模な研究で、遺伝子検査で再発の確率が比較的低いと判定された約7割のケースについては、化学療法が必要でないとの結果が新たに報告された。

研究は米国立がん研究所の委託により、米国内外の研究機関で構成されるECOG-ACRINがん研究グループのチームが実施した。その結果が3日、米シカゴで開かれた米臨床腫瘍(しゅよう)学会で発表され、同日発行の医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)に掲載された。

チームは、早期乳がん患者1万人以上の腫瘍組織の遺伝子21種類を解析し、それを基に算出した再発リスクを0~100のスコアで示した研究のうち、特にスコア11~25のグループに注目した。

乳がんの治療にはホルモン療法に加え、化学療法を併用するかどうかの選択肢がある。これまでの研究で、再発スコア0~10の患者に化学療法は不要とみられる一方、25を超えた患者は化学療法を加えることで再発率が下がるとの結果が出ていた。その中間にあたるスコア11~25の患者は念のため、化学療法を受けているケースが多い。

新たな研究ではスコア11~25の患者について無作為に2つのグループに分け、一方はホルモン療法のみで治療、もう一方には化学療法を併用した。

両方のグループを平均9年間にわたって追跡した結果、再発がみられなかった患者の率は、ホルモン療法単独のグループで83.3%だった。これに対して化学療法を併用したグループでは84.3%と、統計上有意な差はみられなかった。

再発スコアが16以上で閉経前の場合は、化学療法との併用が望ましいケースも

生存率も単独グループが93.9%、併用グループが93.8%と、ほぼ同じだったことが分かった。

がんの兆候が見られた全体の30%に当たる女性には、ホルモン療法と化学療法の併用が推奨されるという。

一般に閉経前の患者は腫瘍の進行が速いとされることから、研究チームはさらにスコア16~25で50歳未満、閉経前のグループだけを取り出し、データを別に分析した。すると、このグループではわずかながら化学療法による効果が認められたという。

化学療法は患者の体に大きな負担がかかる。従来その対象とされてきた再発スコア11~25の患者を、ホルモン療法単独で治療できるメリットは大きい。ただし、患者の再発スコアが16以上で閉経前の場合は併用療法を検討することが望ましいと、専門家は指摘している。

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